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発する

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 発 信しないと、コミュニケーションは始まらない、続かない。
 何かを伝えるだけでなく、相手の話を聞く時にも「私はあなたの話を聞いています」というメッセージを(たぶん非言語的に)発しなければならない。


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 発信しないと、コミュニケーションは始まらない。けれど発信しないことはもはや不可能だ。

 発することは、すべてのコミュニケーションの基礎の基礎になるスキルである。
 よく言われることだけれど、言葉(バーバル)による発信と、言葉以外(ノン・バーバル)の発信がある。
 うなずくことも発信だし、黙ることも発信だ。背を向けることは、もっと意味深い発信だろう。
 (おまえとは)コミュニケーションしない、というメッセージを、だからこそ相手に伝える(コミュニケーションする)ことができる。

身なり/身ぶり

 言葉以外(ノン・バーバル)の発信には、意識的なものもあれば、無意識的なものもある。身ぶり手ぶりの他にも、声の調子や顔の表情、対人距離、それに無 意識の仕草、身に付ける(あるいは身に付いた)衣服やにおい、といったものも含まれる。
 自分が何も発信しまいとしても、言葉以外(ノン・バーバル)の発信を止めることはできない。

 人間は、相手の心を読もうとする生物だ(あるいは、〈相手も心を持っている〉ものとして扱おうとする生物だ)。

 だから相手が人間の場合、相手が自分をだ まそうとしていないか、常に監視しているモジュールが進化の過程で、どうやら我々には備わっているらしい。「裏切り者発見モジュール」は、相手の無意識の まま垂れ流す(相手の意識のコントロールを受けていない)言葉以外(ノン・バーバル)の発信に注意する。意識でコントロールできるセリフと、相手の無意識 の発信とが、一致するかしないかを(無意識のうちに)比較している。そして不一致は、相手が不誠実である証拠とみなす。

 ゲシュタルト療法の創始者パールズは、クライエントが示す言葉(バーバル)による発信と、言葉以外(ノン・バーバル)の発信の不一致を、くりかえし指摘 して指摘して指摘して、相手を丸裸にした(言い訳しようにも、そこでもバーバルな発信とノン・バーバルな発信の不一致が責め立てられるのである。黙り込ん でも、ノン・バーバルな発信は続いている。発信しないことは不可能なのだ。逃げ場は無い)。

 たとえば相手がどんなものを着ているかで、相手がどんな話をするのか(自分とコミュニケーション可能かどうか)を、現代人は瞬時に判断している。
 どんな階層出身 で、どんな経験をしてきたのかから、誰とだったら話をする気があるのか/話ができるのかまで、無意識に判断できる(たとえばボキャブラリーの量と質、その 偏り具合まで分かってしまう)。
 そうした判断のできない人間もまた、その属性にふさわしい(身なりにかまわない/身なりを解読できない)格好をしているから、多くの人々 は最低限のコミュニケーション回路だけを彼等に開く(あるいは、いろいろ言い訳付けて、コミュニケーションを回避する)。


社会適応機能尺度(SAFE: Social Adaptive Functional Scale)は、19の項目の内、最初の2つは、
 1 入浴と清潔
 2 着衣の管理
である。

1 入浴と清潔
(0)障害なし:促しや助言がなくても自分で入浴し、清潔にする。整容に気を配り、これに自信がある。
(1)軽度の障害:たいていの入浴や清潔上の課題を実行できる。爪切り、ひげ剃り、入浴、頭髪の櫛入れについて声かけが時々必要であるが、促されれば、こ れらを実行できる。
(2)中程度の障害:複雑でない清潔課題(頭髪の櫛入れ、シャワー)を実行できるが、より複雑なもの(ひげ剃り、爪切り)は援助が必要。また、清潔を保つ ためには、定期的に声かけが必要
(3)重度の障害:清潔行動を自分からは全く始めない。入浴や清潔を希望はするが、基本的な清潔課題(頭髪の櫛入れ、シャワー)にも広範な援助が必要。普 通でない極端な髪型や化粧にこだわる。
(4)極度の障害:清潔や入浴に協力しなかったり拒否が強く、健康上の危険をもたらす。

2 着衣の管理
(0)障害なし:援助なしに着衣できる。所持する衣類から季節に応じた衣服を着られる。お金や機会があれば、衣服を買ったり適切に選んだりできる。
(1)軽度の障害:促しや援助なしに着衣できるが、時々だらしなくみえる(例:汚れ、破れ、シャツがはみ出している、ボタンやファスナーが留まっていな い、靴ひもを結んでいない)。
(2)中程度の障害:着衣に際し、何らかの促しが必要。服の組み合せが奇妙だったり(例:ズボンガ裏返しである、服を何重にも切る)、季節に合わない服を 着たりする(夏に厚いコート)ことも時にある。衣服をいつ洗濯する必要があるか分からない。
(3)重度の障害:着衣に関し広範な援助が必要だが、この援助に抵抗はしない。しばしば奇妙な組み合せや季節に合わない服を着る。不適切な状況と気付かず に服を脱ぐ。
(4)極度の障害:着衣を拒んだり、対人反応性がひどく乏しいため身だしなみが生活上の意味をもたず、ほとんどの時間をパジャマや寝間着で過ごす。


声/口調

 自分に自信の無い人は、録音した自分の声を聞いてみよう
 普段、自分の声は頭がい骨を伝わって耳に入る。録音した声は、普段あなたが聞いている声とは違っている。しかし、人が聞いている声は、録音した声の方に 近い。
 繰り返し、いろんな声と口調を試してみよう。何度も録音をした自分の声を聞いてみよう(自分の声が嫌いだと言う人は少なくない。しかしトレーニングは大 抵、いくらかの苦痛を伴うものだ。何度も繰り返し聞いているうちに馴れてくる)。
 誰もがいくつもの声と口調を持っている。自分の声を聞き分けよう。弱い声、力強い声、落ち着く声、魅力的な声……など、自分の声を発見しよう。
声/口調の属性(どの要素をどう変えるかの指標)
  • 声の大きさ(大きい小さい)
  • 話す速さ(速い遅い)
  • メリハリがある/平板な話し方
  • 声の高さ低さ
  • 明瞭な口調か/不明瞭な口調か
  • 標準語の/方言の/独特のアクセント
  • 力強い口調か弱々しい口調か
  • 間を長く取って話すか/ほとんど取らないか
 自分の声/口調の属性をチェックして、ひとつかふたつ変えてみる(例:大きな声で早口、メリハリがあり高い声、口調は明瞭、やや方言かかったアクセン ト、口調は力強く、間をほとんど取らない→話すスピードをときどき落とし、意識的に間をあけて話してみる。作った声で何か同じものを朗読して録音するとよ い(比較しやすい)。
 さらにひとつかふたつの属性を変えてみる。これを繰り返していろんな声/口調を作り出す。

 もうひとつ、声で重要なのは姿勢だ。
 胸を張る、あごを引く、そして背筋を伸ばすなど、推賞される姿勢をとることが、声にどんな影響を与えるか実験してみること。発声法の本を読んでみるのも いい。
 反対に、いわゆる「三角座り」(膝を胸に付くように両腕で抱えて座る)してみて、声がどうなるか試してみること(実はこれは、生徒間のおしゃべりをさせ ないために開発された、自己拘束姿勢である)。

 自分の声/口調を複数持つだけで、あなたのコミュニケーション能力は格段に上がる。
 自分の声/口調をコントロールできるようになるだけで、コミュニケーションについての自信が身に付いてくる。

対人距離

 対人距離については、距離をどれだけ取るかよりも、〈相手が退け ばこちらも退き、相手が近付けばこちらも近付く〉を基本ルールにしておけば、大抵は間に合う。片方が与えれば、受け取った方はお返しする、返報性(あるいは互酬性)の 原理である。
 見知らぬ人に声をかけた場合、相手は聞こえなかった振りをして足早に立ち去るか(対人距離は開いていく)、体を向きを変えこちらに正面を向け(すなわち 正対し)しかし適度な距離を保とうとするだろう。ここでこちらが一歩踏み出そうとすれば、相手の重心は後ろに傾く(対人距離を保とうとする)。その時は、 こちらも相手から少し距離を取る(心持ち下がる)。そして用件を言おう(道を尋ねる、時間を尋ねるなど)。
 同席することは、対人距離のコントロールに制限がかかる(座を立つのは、少しばかり抵抗がある)。すなわちその程度の危機感で対してよい相手だというこ とだ(初対面であっても、誰かの紹介があるのかもしれない)。それでも、上半身の傾き(心持ち乗り出す/心持ちのけぞる)や顔を向きを変える(こちらを向 く/背ける)ことはできる。ここでもルールは〈相手が退けばこちらも退き、相手が近付けばこちらも近付く〉でいい。
 相手との距離を測るのに、まず自分から近付く(あるいは相手の方を向く、声をかける)ことが必要かもしれない。無視されたら、逆に距離を取られたら、ど うしようという不安・恐怖がアタマをよぎる人もいるかもしれない(そうした不安・恐怖への対処法は、項を改めて示そう)。しかし無視されても、距離を取ら れても、それで足下が崩れ去るわけでも自分の心臓が止まる訳でもない。
 科学者の気持ちになって、相手と自分を観察しよう。自分は対人距離の研究をしているのだ。今は対人距離についての実験をしているのだ。結果を冷静に記録 するつもりになろう(実際に記録するのも良い手だ)。自分に自信のない人は、自分に過度に焦点を合わせて、相手のことを見ていないことが多い(自己の否定 につながるサインだけを見て、その他の他人の振る舞いを見落とす)。いずれにせ よ相手・他人についての観察を重ねることが、対人関係についてのよ いトレーニングになる


自己開示

 自己開示とは、自分がどのように考え、感じているのか、自分自身について気づいていることを他の人に伝えることをいう。
 「自分の感情(気持ち)に関すること」
 「自分の個人的な経験に関すること」
 「自分の過去・現在・未来に関すること」
などを、自分の言葉で相手に伝えること。これらはすべて自己開示である。

 自己開示をすると、たいていは相手も同じように(同じような種類の/同じようなレベルの)自己開示をしてくれる(「返報性(あるいは互酬性)」 がここにも働いている)。自己開示を相互に繰り返すことで人間関係をより親密に、より深めていくことができる。

 では人間関係が成立していない場合、どのような自己開示をすればいいか。これについては、先の対人距離についての方法が、同様に利用できる。
 すなわち、返報性の原理にしたがって、〈相手が少し開示すればこちらも少し開示し、相手が大きく開示すればこちらも大きく開示する〉を基本ルールにして おけば、大抵の場合、間に合う。
 好ましい自己開示、あるいは自己開示の落ち着きどころをさがすためには、対人距離の場合がそうだったように、こちらが先に動く(開示する)ことが必要か もしれない。まずは少しの自己開示を行う。すると相手はそれに応じた自己開示を行ってくるだろう。こちらの自己開示に対して、相手がどう応じてくるかを確 かめるのだ。
 こちらのわずかな自己開示に対して、相手も自己開示で応じてくれば、さらに進んだ(しかし進むのは少しずつがよい)自己開示を行えばよいだろう。相手が 身を引く(自己開示しない)態度で応じた場合は、こちらもこれ以上の自己開示を止め「失礼します」と対人距離を取ればよい。つまり相手からのフィードバッ クを受け損ねなければ、深刻な状態に陥ることはない。
 
 自己開示についても、多くの心理学の実験が行われている。その知見は、覚えておくと、役立つこともあるかもしれない。たとえば、
  • 女性は男性に比べ、内面的な自己開示をすると好まれる(相手からもよい反応を得られる)
  • 相手が自己開示したレベルと同じくらいのレベルで自己開示を返報すると好まれる
  • 会話の始まりの方よりも、終わりの方で自己開示する人の方が好まれる
 
 初対面の相手には、挨拶からはじめ、儀礼的な決まりきった言葉のやりとり(スモール・トーク)や、その場にあった話題(コンテクスト・クルー)へと進 み、後半から別れ際にかけて、いくつかの控えめな自己開示を行うのが「石橋を叩いて渡る」方法かもしれない。放埓な人は、いきなりあけっぴろげな自己開示 を(リスクをおかして)行い、一瞬にして人々から親密さを獲得するかもしれない。しかし、我々はもっと慎重であっていい。(自己開示には、「あなたが特別 な存在だからこそ自分のことを話すんだよ」という含みがある。これが親密さを増すことにつながる)。ゆっくり進むことは、ステップのひとつひとつから、よ り多くを学ぶことにもつながるからだ。

 自己開示には、量だけでなく質も問題になる。プライベートな情報の開示は、わずかな量であっても、より多く表面的な事情の開示することよりも、大きな自 己開示になるだろう。しかし何が「よりプライベートであるか」は微妙な問題である。個人的な政治的信条を明かすことと、自分の苦手なものを明かすこと、自 分の(社会的に認められない)性癖について明かすことでは、どれが「よりプライベートである」だろうか? ふさわしい話題の判断と同様に、ふさわしい自己 開示の分野が何であるかの判断は「常識」の一部を構成する。つまり自然と獲得すべきとされ、誰も表立っては直接教えてくれない事項に属する訳だ。ここでも 再び、返報性の原理と、それを作動させるために「先に働きかける/しかし最小限の働きがけにする」というルールが役に立つ。

自己開示の不安を乗り越える

 自己開示には、リスクが伴う。うまくすれば、相手も同程度の自己開示を返してくれて、二人の関係はより親密になるだろう。しかし、うまくいかなければ、 相手は自己開示で応じずに逆に自分との間に壁を置くだろう。そして二人の間に溝ができるだろう。したがって人は自己開示について、不安や恐怖を覚えること もめずらしくない。
 自己開示に伴う不安を乗り越えるためには、(対人恐怖症/社会不安障害の域に達している場合は医療機関の受診を勧める)、結局のところ「自己開示の恐怖 に直面しそれから逃げ出さずに恐怖に馴れる」しかない。
 実のところ、恐怖はわずかの時間しか続かない(時間が進むに従って変化する不安のレベルを実際に測ってみることは、よい気そらしになる)。
 事前に自己開示についての恐怖・不安を見積り(記録しておいて)、自己開示の現場では恐怖・不安のレベルが刻々とどのように変化していくか(最初は高ま るが、やがて上限に達して、そのあと低下していく)を自己観察してみる。あるいは、あらかじめ自己開示についての非機能的な信念、たとえば「私をみんなが 嫌っている」「自己開示してもよいことはひとつも起こらない」「自分が誰かに受け入れられることなどあり得ない」などについて、その現実性・論理性・そし てそうした信念を持ち続けることの損得(不安に直面しなくて済むのはメリットだが、多くの人間関係を結ぶ・広げる機会を失い続けることは大きなデメリット だろう)について、考察しておくのもよい(認知療法や論理療法のスキルが役に立つだろう)。あらかじめ「起こり得る最悪の事態」を想定・イメージし、そう して恐怖をやわらげるのに役立つセルフ・トークを発見しておくことも、おまもり替わりとなるだろう。繰り返すが、自己開示の恐怖は、自己開示してみて、実 は恐れていたようなことは、ほとんどの場合起こらないし、起こったとしても致命的でないことを実体験することで、最も速やかに克服される。


I(私)ランゲージ

自分の話し言葉や、考えるときの言葉(セルフトーク)を、「私は〜」ではじまるものに変えてみる。
  

 たとえば
  • 「おまえは最低だ」→「僕は傷付いた。腹が立つ」
  • 「この映画どう思った?」→「この映画、とてもいいと思ったわ」
  • 「お皿が割れちゃった」→「私、お皿割っちゃった。ごめんなさい」
  • 「あなたは口が聞けないの?」→「私、あなたにちゃんと言って欲しいの」
I(アイ)ランゲージ(「私」メッセージ)を使うことで、自分の考えや発言が、私のものであることを、自他共にはっきりさせることができる。
 自分の考え(主観)にすぎないものを、あたかも事実や真理であるかのように人に押し付けることができなくなる。これは自分を押しの弱い交渉力の低い人間 にしてしまうだろうか。否、自分の考えであることをはっきりさせることで、相手の考えを受け入れる余裕を作り出す。このことは交渉やより広く人間関係から 余計な強がりをなくし、自由さを増す。

 また、I(アイ)ランゲージは、自分の考え/感情を相手にオープンにするものでもある。人間関係は相補的かつ互酬的であり、自分がオープンになった分だ け、相手もオープンになることができる。固い鎧をまとった攻撃的なスタンスから、鎧を脱ぎ捨て、くつろいだスタンスで相手に対することは、人間関係を改善 する。
 また、普段から「〜させられる」と言う人は、自分は周囲の環境に翻弄され続けていて、自分のしたいことが何一つできないと考えがちである。そうして周囲 に欲求不満を覚え、怒りや泣くことで周囲を変えようとして失敗し、さらに欲求不満を重ねることになる。

 自分の考えや発言とともに、自分の行動が自分のものであることをはっきりさせることで、自分がコントロールできる領域を少しずつでも増やしていくことが できる。自分がコントロールできる領域に力を注ぐことで、実際に自分を変え、自分を変えることを通じて、周囲を変えることを学ぶ機会を得る。


うなずく/相づちを打つ

 何かを伝えるだけでなく、相手の話を聞く時にも「私はあなたの話を聞いています」というメッセージを(たぶん非言語的に)発しなければならない。

 よく言われることだけれど、言葉による発信と、言葉以外の発信がある。
 黙ることも発信だし、うなずくことも発信だ。


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