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           読 書 猿   Reading Monkey
            第26号 (冬の間の中休み号)
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■読書猿は、全国の「本好き」と「本嫌い」におくるメールマガジンです。
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■■『このミステリーがすごい』(宝島社)=========■amazon.co.jp

 書評は、誰の、何のためにあるのだろう。
 たとえば、書評を見て、自分が読む本を決めたり、買う本を決めたりする人
がいるのだろうか?
 もし書評で「本を決める」なんてことがあるのだとすれば、世の中には(そ
して本屋には)、書評なしでは互いに区別がつかないほど似通っているたくさ
んの本が存在していることになる。
 なるほど「このミステリーがすごい」なんて本が存在するわけである。

■■水見稜『マインド・イーター』(早川書店)==============■amazon.co.jp

>「知的生命はなぜ我々にメッセージを送ってこないんでしょう?」
>「その悩みは、そのまま思春期の悩みだと思わない?」リンダは云った。「遠
>くから女の子を見つめていたことはない? ただ見つめているだけなのに、コ
>ミュニケーションしているつもりになってしまう。そして、むこうはこちらの
>名前すら知らないのに、何故思いが通じないのだろうと思ってしまう。ぼくは
>彼女が何時のバスに乗るか、どの教科が得意で、友達とどこで昼食を食べるか
>知っているのに。ぼくは彼女の家までの道順をそらで云えるのに。ぼくは彼女
>の好物を知っていて、絵が上手なことを知っていて、合唱コンクールの何列目
>の何番にいたかまで知っているのに、なんであの娘はぼくのことを知らないの
>だろう----とね」
> 「なぜコンタクトしてこないのか? 我々がコンタクトをしようとしたかど
>うかにその答えはあるでしょう。オズマ計画のように、教室の窓からグラウン
>ドの彼女を見つめていたことはあるわ。でも彼女に話しかけたことはある? 
>電話はおろか、手紙だって書いたことがない」
>「でもボイジャーは?」
>「あの気取った判じ物? あんなもの、ヒマラヤの山頂にいる友人に届けと念
>じて、ミシシッピに瓶を流すようなものよ」

 宇宙の話は、時に感傷をおびる。

■■山岸凉子『メタモルフォシス伝』(花ゆめコミックス)=========■amazon.co.jp

 普通、外部からの撹乱者は意識的か無意識的かどちらかだが、それがこの作
品では明確になっていない。
 行動そのものは意識的のように読めるが、その意図と動機が不明確なのであ
る。
 視点がその撹乱者自身ではないところがその弱さを助長している。
 撹乱者の一人称でないのは、正体を明確にせずにミステリーの要素を取り込
もうとしているからだろう。
 基本的に「風の又三郎」である。
 「風の又三郎」がこの作品と違うのは、撹乱者が意識、無意識を超えたとこ
ろにあるからである(善悪の彼岸)。
 なぜそれが可能かというと、「風の又三郎」を規定している主体が「風の又
三郎」自身ではなくて、分校の子供たちだからである。
 一方、この作品ではクラスメイトたちの意識は「受験」に制約されているか
ら、撹乱者を規定するところまで行かないのである。

■■『維摩経』(中公文庫 他)=====================■amazon.co.jp

 『維摩詰所説経』−ヴィマラキールティ・ニルデーシャスートラ、「汚れな
しとの名声があるものによって書かれた、と名付けられる、聖なる大乗の経
典」

 全部読んだ訳ではないのに気楽に言うが、おそらくは大乗仏典中、最高の傑
作。(それがいけないなら、「この経典がすごい 98年度版」で1位だと
か、言おう)。
 効力は、般若経に劣るかも知れないが(なにしろ今昔物語には、「般若経、
くそったれ」と罵ったのに、それでもその経典の名前を口にしたんだからと、
地獄に堕ちずに済んだおばあさんの話がある)、おもしろさは随一である(な
んてことも、全部読んでないのに言っちゃいけないことなんだけど、他の人も
気楽に言ってるみたいなので、まあいいや)。

 まずは出家してない在家の人、維摩居士さんが、有名なブッダの十代弟子
を、それぞれの得意分野で、コテンパンにやっつける。
 それどころか、弥勒菩薩をやっつけ、光厳童子菩薩をやっつけ、持世菩薩を
やっつけ、善徳菩薩をやっつける。
 痛快でドラマティックであるだけでなくて、反語的でかつクリティークな
「法」の定義、「菩薩」の定義が、やさしくまくし立てる維摩のセリフ中にリ
ストアップされていたりして、きちんとマニフェストにもなっている。
 そのあとも、維摩居士V.S.文殊菩薩という見逃せないカード(対戦)に、宇
宙中から神様をはじめいろんな存在がうじゃうじゃ集まってくる。
 それまでの説法についてのテスト(笑)、これには各31菩薩がいろいろ述
べたてるのだが、最後に文殊菩薩が「一切は無言、無説、無示、無識だよ」と
それら諸問答を一蹴する優等生な解答を示し、さらには維摩居士が、なにもこ
たえない、ことで、文殊菩薩の答えの正しさといたらなさ、を同時にあばいて
しまう超有名な入不二法門の下り。さらに、そこから十万世界を飛び回るは、
神通力(サイキック!)をつかいまくるは、……と、ド派手な展開が続き、見
せ場が絶えない。

 何でこんなに面白いのかと考えるに、演劇的な構成よりもむしろ、全編にち
りばめられたクリティシズム(批評性)が、キラキラしているせいだろう(こ
こらへんがとっても大乗仏典だ)。「仏教なんてこんなもの」とタカをくくっ
ている読み手を、これでもかこれでもか、とばかりに投げ倒す。
 たしか聖徳太子も大ファンで、自ら解説書を書いている(「維摩経義疏」)。
 

■■ジェンキンズ『わかりやすい聖書ガイドマップ』(いのちのことば社)===■amazon.co.jp

 「聖書解釈」についての本を買い行ったのに、いつのまにかこの本を買って
た。もちろん解説書ではない。聖書に出てくる場所、たとえばベツレヘムへ行
くには右に行ったらいいか左にいったらいいか分からない不案内な者のための
本物の「地図」である。本の帯には「こんな地図を待っていた!−コンピュー
タによる立体聖書地図入り」である。しかも中を見ると、なんというか「ほの
ぼの」している。「ほのぼのした3D聖書コンピュータマップ」! これが買
わずにいられようか。買ってしまった。

 読んでみると、なんと旧・新約聖書の内容を100ページそこらで、しかも
ヴィジュアルでもってまとめたものであることが判明した(しかも「コン
ピュータ」というコトバがウソのようにほのぼのしてる)。つまりこれは「歩
くための地図」であると同時に「読むための地図」でもあったのだ。
 似たようなのに、『西洋絵画の主題物語 聖書編』(美術出版社)がある
が、これは旧・新約聖書の内容順に、それぞれのエピソードを題材にした絵画
を並べたもの。どうでもいいが、これの監修者兼執筆者の諸川春樹という人の
文章は、いつ読んでも頭がわるくなる気がする。

■■ 『実戦日語会話《求職篇》』====================■

という台湾の日本語会話の本から

(原文は漢字にほぼ総ルビ、日中対訳)

//はしがき//

「若い人達の間で、日系企業や日本関係の仕事に従事する人々が着実に増えて
きています。
本書はこのような方々が《より実戦的で自然な日本語会話》を学べるようにと
いう願いを込めて編纂されました」

//使ってある写真//

 「結婚」ページに神田正輝と松田聖子、巨人の原の写真
 「希望職種」のページに意味もなく20年位前の秋吉久美子のポートレートが
1ページを占めている。/アサヒビールのCMからかっぱらったとわかる写真。
/渡辺淳一の書斎写真(どっから取ってきたんだ)。

//内容 単語部分//

*日本人の好きな食べ物
1.ラーメン(中華ソバ)

24.シチュー
25.インスタント・ラーメン

29.漬物(お新香)

38.チョコレート

*いろいろな美人
1.素肌美人
2.化粧美人
3.整形美人
4.健康美人
5.八頭身美人
6.電話美人
7.日本語美人
8.八方美人
9.新潟美人

12.浴衣美人
13.湯上がり美人
14.平安朝美人
15.そばかす美人

//内容 「日本、日本人について」//

「日本人の面接担当者の心証を悪くするような言動は慎むべきですが、日本語
の表現練習の為に敢えてここに日本人の悪いと思われるところを書き出してみ
ました。」

「10.英語が苦手で発音が悪い。でも文法に強い。」
「15.日本文化は独特だから外国人には到底理解できないと思いこんでいる
。」
「25.ストレス過剰で慢性的な欲求不満になっている。」
「26.わざわざ外国へ買春ツアーに出掛けるなどHで嫌らしい。」
「28.『旅の恥はかき捨て』といって、海外でひんしゅくを買う人が多い。」


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