結合通信(2回生配当)16:

 今日は銀行について学びました。その銀行の名前は、本当の名前かどうかわかりませんが(本当の名前があるのかどうかもわかりません)、みんなは「テロ銀行」と呼んでいます。テロリストがテロをする時、そこでお金を借りるのです。最近のテロは、高度化(ハイテク化)、大規模化が進んでいるので、精巧な武器やその訓練、隠れ家、生活費、世界中の旅行、偽装、偽造書類、エレクトロニクス等々のため、たくさんのお金が必要です。自前で資金を用意できない個人やグループは、テロ銀行にテロの計画書他を提出して、いろんな条件を相談の上定めた後、テロ資金の融資を受けるのです。成功の可能性については、きびしいチェックがありますが(時には保険会社が映画のシナリオを書き換えたりするのと同じことが行なわれる場合があります)、国籍やテロの対象、テロを行なう個人やグループの主義主張は問われません。テロ銀行の融資は一種の「冒険貸付」の形を取っていて、テロ成功時には、資金をかなり高い利子を付けて返却しなければなりませんが(テロリストは他から表立ってお金を借りられないので高い利子でも融資を求めてくるのです)、万一失敗に終われば、借りたお金は返さなくて構いません。いわば保険金の前払いの形で、一種のテロ保険(失敗すると保険金がもらえる)になっているのです。もっともテロ銀行のアンダーライター(鑑定士)のきびしい審査の結果、融資を受けたテロ計画は、80%以上の確率で成功すると言われています。また成功の確率にしたがって、貸付利子は数段階にランク付けされ、成功の確率が高いほどより低利で融資を受けられます(これはより少ない保険料で保険が掛けられるのと同じことです)。
 テロ銀行は元々、テロ組織同士の相互的な資金協力から生まれました。交換テロやその他国際的な破壊協力と共に始まったのです。ところがテロ組織はそもそも分裂や壊滅、その他再編成を常に余儀なくされるものです。したがってもっと安定した資金供給システムがのぞまれていました。その構築に成功し、テロ金融の世界に「革命」を起こした人たちがいました。いくつかの国際的なテロ・ネットワークのオルガナイザーだった3人の男女です。彼らはテロを支援する数国から資金を吸い上げ、それで武器を買うかわりにいくつかのペーパーカンパニーやダミー会社を作り、今のテロ銀行の基礎になる「国際テロ基金」を設立しました。彼らは組織を最初ブリュッセル、スイス、ハイチ、香港、シンガポール等に、その後にはもっとあちこちに分散しました。テロ銀行はみえない銀行です。建物も本部もありません。世界中の市中銀行がその金庫です。彼らは世界中に張り巡らされたネットワークを通じて大規模なマネーロンダリング(資金洗浄)を行なって、このことでまた膨大なブラックマネー(麻薬取引や賭博などの不法な手段で得た金)を基金に組み込みました。また高利なテロ融資を元に高収益の資金運用を行ない、一般投機筋からも(ダミー会社を通じて/偽の運用計画を示して)資金を集めることに成功しました。
 テロ銀行は、その「細胞」としていくつかの「投資部門」を持っていて(それらはヘッジファンドなどの投資信託組織に偽装しています)、現物と先物・オプションを組み合わせ、投機や裁定取引を活発に行うことで、積極的に資金運用を行なっています。通常のヘッジファンド等と違うのは、さらにそれらに加えてテロが組み合わされることです。テロ銀行は、様々なテログループに融資を行なうだけでなく、独自の資金調達部門としてのテロ組織を持っています。当初は銀行強盗や密輸や麻薬流通の「犯罪営業」から利益を得て基金を増資・安定させることを目的としていましたが、最近では、例えば企業対象のテロによって株価に影響を与え、その一方投資部門が株式投資で利益を得るといった投資部門との連携が増えています。またテロ銀行には、テロリスト自身からテロの正確な情報が入ってくるので、自らテロをしかけなくても、通貨当局者の暗殺、石油産出国のクーデター等の事前にその詳細について知り得たテロに「便乗」して利益を得ることができます。またある種のテロは、損害保険と反対の関係があります。つまりテロが成功し被害が出れば損害保険は支払われ、失敗し被害が出なければ保険金は支払われません。テロ銀行の「細胞」には、損害保険会社やリスクマネージャーに偽装したものもあり、一種の「両面契約」から利益を引き出します。
 現在では、テロ銀行は莫大な資金を動かすことができ、それを使ったエコノ・テロを積極的に行なっています。拳銃や爆弾で人や物を破壊する代わりに、マネーの力を直接に使ったテロです。企業のオーバーテイク(乗っ取り)やM&A(マージャー(合併)とアクイジション(買収)の略語。合併や買収といった手段で対象企業の事業部門や企業そのものを支配すること)は利益を得るためだけでなく、企業や経済システム相手の破壊行為として行なわれます。乗っ取られ、あるいは支配の下におかれた事業部門や企業そのものは、テロ銀行の「細胞」と化すか、あるいはバラバラに売却されてしまいます。「将来の金利や為替レートをもとに計算した額の資金をやりとりする約束」によるデリバティブ(金融派生商品)は、賭けと同じで、相手に信用されていれば元手がなくてもかまいません。必要なのはせいぜい負けた時に払う額の一、二割の証拠金だけです。つまり、勝ち負けが投入資金の5倍、10倍になる可能性がある、したがってうまくすれば持っているお金の5倍、10倍のお金が操れる。これがレバレッジ(てこ)です。レバレッジにレバレッジを重ねれば、50倍や100倍もの資金を操ることができます。各国通貨当局は為替相場の乱高下を阻止するため大規模な市場介入しますが、これに合わせて徹底的な売り浴びせ攻勢をかけ(もちろんレバレッジを駆使して少ない元手ながら通貨当局の数倍の資金を投入します)、結果市場介入を失敗させ通貨制度を混乱・破綻させるのみならず、最終的には通貨当局の投じられた莫大な資金を手中に収めるのです(1992年の欧州通貨制度(EMS)崩壊がよい例です)。さらには穀物市場に影響を及ぼしアフリカ・アジアで億の単位の餓死者を出させたり(穀物・食料は大半は生産国内で消費され国際市場に出る量は少ない、いわゆる供給の「薄い」市場なので、少しの買い占めが数倍の価格上昇を生みます。外貨をわずかしか持たない国々では文字通り死活問題になります)、某小国のGDPを吐き出させ「蒸発」させ、革命なり地域紛争なりを準備します。それがまた儲け口になるのはいうまでもありません。テロ銀行の目的は世界に破壊と混乱を生み出すことですから、その営為は目的にかなってます。




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