結合通信(2回生配当)11:

 工作の時間は一等好きな授業です。テーマは毎回違っていて、古典的ガジェットの制作から、ハイテクの応用までとさまざまですが、作ることが楽しくて作った後も面白い、というのはどれにも共通してます。
 今日は「レーウェンフックの顕微鏡」を作りました。もちろんそっくりそのままという訳でなく、かなりアレンジされたものです。先生は「手抜きの天使」と呼ばれている人で、大抵のアレンジは、自分と私たちの手間を軽減するためのものです。まずは、レンズですが(「レーウェンフックの顕微鏡」は、レンズ以外はおもちゃみたいなものです)、これを磨き上げる手間を先生はいきなり省いてしまいました。「やめやめ。そんなことしてちゃ何日もかかっちまう」。実際「レンズ磨き」は何日もかかる(その技術を身に付けるには何年もかかる)ものなのです。そして私たちはとうとう(といっても先生がやるを真似て、ほぼ2分間で)、レンズを作ってしまいました。そのやり方は以下のとおり。----理科室に置いてあるガラス棒(よくビーカーにいれた薬品をかき回すアレです)をゆっくりバーナーの火であぶります。棒の両端をもって、真ん中あたりをゆっくり熱するのです(急にやるとガラスが割れます)。ガラス棒の中央部が赤く焼けて柔らかくなってきたら、火から離して両端をひっぱります。柔らかくなった部分が引っ張られて、60センチほどの髪の毛みたいに細い糸になります。この細い糸を15センチくらい残して切り、今度はこれをまたバーナーの火の中にいれます。するとちりちりとガラスは焼け溶けて、糸の先は小さな玉のようになるでしょう。この玉が直径1/16インチ(約1.2ミリ)になるまで、火の中で溶かします。
 さて、レンズが出来上がりました。表面張力でできてガラス玉は、この大きさだと約160倍の倍率を持っています(たとえば直径1/10インチなら100倍)。ガラス玉にくっついているガラス糸は、そのままにしておいて、レンズの固定に使います。
 レーウェンフックは、レンズを2枚の真鍮の板ではさみましたが、私たちはボール紙に小さく穴をあけて、そこにちょうどガラス玉がくるように、ガラス糸をボンドでボール紙に張り付けます。レンズに向かう光が洩れないように、穴はレンズより小さく開けるべきです。そのことが像のコントラストを改善します。
 あとは、標本を保持する装置です。オリジナルの「レーウェンフックの顕微鏡」では、標本はねじによって調整される針に刺されて、人間がレンズを覗くちょうど反対側に位置するようになっていましたが、私たちはここでも手を抜いて、セロファンで代用しました。ボール紙に張り付けたセロファンに、標本を張り付けて観察します。さて、レーウェンフックにならって、私たちも「微小世界」の探検といきましょう。彼のデビュー作は、「アントニー・ファン・レーウェンフック伝えるところの観察記録。1676年6月10日のオランダ語の手紙。ここに英語にする。雨水、井戸水、海水、そして雪等など、また芥子をひたした水のなかに見られる小動物についての観察」です。芥子をこした水を3カ月置いておかなくてはならないようなので、私たちはもっと簡単に、唾液や血液や蚤なんかを見ることにしました。スケッチを同封します。

 注意事項:レンズは簡単に作れるので、いくつも作ってみて、いちばんよいものを使用すべきです。ちょっとした加減でガラス玉はいびつになってしまって、そのままだとよい結果が得られないからです。
 注意事項2:このレンズは、もうお分かりでしょうけど、焦点距離がとっても短いです。標本をほとんどレンズにくっつけなくてはいけないのと同じに、顕微鏡を覗く人の目も、レンズに触れんばかりに近付かなくてはなりません。くれぐれも覗き過ぎにご注意!どうか目をお大事に。
 それでは、また。






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