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           読 書 猿   Reading Monkey
            第9号 (旅行でしばらく休む号)
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■■H.G.ウェルズ『世界文化史概観』(岩波新書)=======■amazon.co.jp

 どこかで書いたが、ウェルズという人は『解放された世界』という小説の中
で、世界で最初に「原子爆弾」を発明してしまい、それをひどく後悔して、ま
だ物理学者がその開発に手を染める前から、「反核運動」をはじめた人だ。
 彼はまた歴史を書いた。今では、「ビックバンから世界史を始める」という
のはめずらしくもないが、そんなことを初めてやったのは、やっぱり「タイ
ム・マシン」を書いたH.G.ウェルズで、「世界史概観」という本がそう
だ。このころ、彼はまだ「原子爆弾」を発明していなかった。彼はこれまでの
世界史を概観するだけでは済まさずに、これから先の世界史(未来のこと)も
予想して、「世界史概観」の最後に書き加えた。
 ところがその後、ウェルズはA SHORT HISTORY OF THE WORLDというのを書く
ことになった。これは、「世界史概観」を1/5に縮めて読み物にしたものだ
が、これを書くに至った経緯とは、こうであるらしい。つまり、原子爆弾を図
らずも発明してしまったウェルズは、ありとあらゆる平和運動に荷担すること
になったが(バカな政治家たちにすっかり骨抜きにされ役立たずにされてし
まったが、もとはといえば世界連盟というのもウェルズの発明だった)、それ
だけではまだ足りず、あの楽観的だった「世界史概観」の結末を、ぐっと悲観
的なものに変更する必要を感じたからだった。自分がしてしまった事が、歴史
を変えてしまうに足ることであると、彼は知っていたのである。
 『解放された世界』を読み感激し、生物学者への道を捨て核物理学者に転向
したシラードが、あらゆる「原子の火」の根本になる、連鎖式核分裂の実験に
成功するのは、あるいはアインシュタインをくどきおとし、ルーズベルト大統
領へ「原子爆弾」開発推進を勧める手紙を書かせるのは、まだずっと後のこと
である。

 これは、中華事変当時に出版されたその翻訳。日本のその後の歴史とウェル
ズがこれを書いた理由を知るならば、その翻訳出版年はやはり明記すべきだと
思った。

 次はこの本からの一節。

 「紅海には、ピラミッドがつくられるよりずつと以前から船があり、地中海
やペルシャ湾には、紀元前7000年頃から船があつた。これらの船は、大抵
は漁採民の船であつたが、交易船や海賊船もすでに多少はあつた、といふわけ
は、最初の船乗りは ----- 人間であつたことだから ----- できれば掠奪
し、やむをえなければ交易したものと想像して、まあ間違いないだらうからで
ある」(第17章 最初の航海民族)

■■小林恭二、『ゼウスガーデン衰亡史』(福武文庫)■=========■amazon.co.jp

 買ったときには読むかどうか分からなかったが、読み始めると結構するする
と読んでしまった。歴史記述の体裁になっているが、それを完全に模倣しよう
という意識は薄いようだ。むしろ、列挙法だとか、頻繁な改行だとかの中途半
端なレトリックが目立つ。しかし、一番驚いたのは、ひょっとしてこの作品に
は「テーマ」があるのではないか、ということだった。しかも、それがあると
したら、露骨にあるのではないか、ということだ。

■■中谷宇吉郎『イグアノドンの唄』(文芸春秋社)■==========■amazon.co.jp

 表題の一編がまことに美しい。
 「大雪山の雪」。雪の量を調査しようというので総指令部(GHQだろう)
に航空写真を撮ってくれと頼んで(途中で断られそうになったりする。「チャ
ムスの大学の満人教師が、関東軍指令部へ出かけて行って、日本軍の飛行機を
使わせてくれと頼んだようなものだから」というのだが)、出来上がってきた
写真の上で夢幻自在のスキーをするところが愉しい。
 
 寺田寅彦と較べると、中谷宇吉郎の方には、臭みというか、可愛げという
か、その可愛げもちょっと暗いところ、枯れていない老人的なところがある。
どうも考えてみると、戦後の日本を知らないで死んだか、それへの変化を目の
当たりにしたかの違いであるようにも思える。

 中谷宇吉郎のエッセイは岩波文庫からセレクションが出ている。表題作もそ
のなかに入っている。

■■岡崎久彦 他『クーデターの政治学』(中公新書)■=========■amazon.co.jp

 クーデターをちゃっかり政治の「日常」に取り入れてしまってるタイの政治
の話。民主主義が腐ってくると無血クーデターをやって、ついでに議会政治で
は話のすすまない難しい事をちゃかちゃかやる。で、「絶対権力」が腐敗する
前に、民主主義にソフトランディングする。タイの政治はその繰り返し。しか
も、何度もそういうことをやっているので、誰もがクーデター馴れしていて、
新しい暫定憲法の作り方、どこをどう抑えたらいいか等ノウハウがすごく蓄積
してる。民衆の方も、「今週はクーデターだから、テレビがつまらない」とか
言ってる。日本は毎日テレビがつまらないから、毎日がクーデターみたいなも
のだ。

 本筋にはそれほど関係ないが、タイにはかつて世界史上唯一の哲人王が在位
していた。これもこの本に出てくる。このラーマ4世モンクット王は、プラト
ンは15年でいいといってるところを、27年もパーリ蔵経を勉強し(ついで
に自分で宗派を興し)、さらには英語・フランス語・ラテン語・パーリ語など
の語学力を駆使しそれまでの鎖国状態から開国→きわどい外交をやってのけ、
さらには王宮の占星術師に総スカンをくらいながら日食を正確な計算で予言し
てみせたりした。ちなみにモンクット王はミュージカル「王様と私」での、若
い「王様」がそれ。

■■清原なつの『ゴジラサンド日和』(りぼんコミックス)■========■amazon.co.jp

@ 最近、ヘーゲル読んでるんだけどね。20分ほどまえから(笑)
# (笑)
@ 和田君によると、ヘーゲルの「法哲学」が、世界で最初に「自由恋愛」を唱
えたらしいんだな(笑)
# なに、ちょっと胃が痛い感じ?(笑)>自由恋愛
# (笑)
# ギリシアは?(笑)
@ ギリシャ人は、快楽なんだよ、恋愛じゃなくて(笑)。
@ でも、哲学ってフィロソフィーだろ、知への愛だろ(笑)?
# (笑)うむ
@ でも、ヘーゲルは「知への愛」は嫌いなんだよ(笑)。
@ それじゃ、いつまでも満たされないからって(笑)>知への愛
# しょうがねえな(笑)>ヘーゲル
# るんたさん風に言うと「たまってんじゃねえのか」だな(笑)
@ ヘーゲルによると、哲学は「知の完成」じゃないといけない。大人の恋だね
(笑)
# いいねえ(笑)>大人の恋
# 自由恋愛ってどんな恋愛なんだろうか(笑)
* 自由市場みたいだね、なんか。語感が(^_^;)
@ 自由経済とか自由主義とか(笑)
* そうそう(^_^;)
@ 田中康夫が、「田中康夫の恋愛自由自在」ってのをやってたね(笑)。
# 田中康夫と浅田彰が芝生でねっころがってる写真がこの世界にはあるんだっ
てね(笑)
# いいねえ(笑)
@ 自由主義経済とか、市場の自由って、歴史をリセットできないかぎり、あり
得ないんだけどね(笑)。
# (笑)
* (^_^;)
# かたいこというない(笑)
@ かたいんだよ(笑)
@ たぶん、自由恋愛もそうなんだな(笑)
# 神のみえざる手ってやつだな(笑)
# じゃあ、恋愛だと「運命の赤い糸」かね(笑)
@ 「運命の赤い糸」にも、前後賞とか組違いがあって(笑)。
# (笑)
* ははははは
@ というのを、清原なつのが書いてる>前後賞・組違い
# なかせるね(笑)


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