結合通信 8:

こんにちは、おじさま

 私たちってば、働き者。なんたって、私たちが食べるもの、みんな自分たちで作るんですもの。
 農業のこと書くの、はじめてですね。実はもっと前に書くべきだったんですけど、自分たちがいったい何をやっているのか、それに何でそういうやり方なのか、とにかくうまく説明できそうになくて、つい書きそびれてました(だから今日は、「何で」の方は置いておいて。まだまだ分からないことが一杯なんです)。
 とにかく何から何まではじめてです!都会育ちの子が多くて、牛の藁を取り替えるのもおっかなびっくり。牛を脅かさないようにするのって、コツがあるんですよ。取り替えた藁は肥料にします。そして牛が食べる餌(カブなんかが多いんだけど)も、学園の畑で作るんです。
 学園の畑は変わってます。400人以上も生徒や先生がいるんだから、それは大きな(だだっぴろい)畑や牧場があるのかと、こっちに来るまでは思ってたんです。きれいで広々していて、悪く言えば単調な「風景」はここにはありません。そんな「田園風景」をつくろうものなら、ものすごい数の人手(労働力)か、莫大なエネルギー(トラクター/飛行機でやる農薬散布)が必要だから。実際、広い面積の土地を草地のままにしておくのはたいへんです。ほっておいたら、背の高い草が生え出して、次に小さな木が生え出して、やがて日の当たる場所が減ってうっそうとした林(熱帯ならジャングル)になってしまうでしょう。要は(その土壌と地形と気候に最適な)落ち着くべき状態(終極相)に落ち着いていくわけです(ただし何十年かかかって)。だったら、さっさとその「終極相」にしてしまえば、人間は焼き払ったり、刈ったり除草したり薬を撒いたりしなくたって平気です。結合農法は、「終極相」であって、しかも私たちに好ましい状態から、果実なり作物を手に入れる農法です。

 種蒔きや収穫する日は、天候や惑星の位置を見て決めます。天体が正しい位置の時種を蒔くと(あるいは収穫すると)、発芽具合や病気のなりにくさ、栄養素や何かがぜんぜんちがうらしいの。不思議だけど本当です。
 牛や豚、それと鶏たちがたくさんいます(あと馬と象がいるけど、これは食べません。使役用)。何匹いるのかは、えーと、また今度数えておきます。普通の___種と___種っていうんだけど、みんなおとなしくってお利口なの。ブラームスなんか聞かせなくたって充分お乳がでるし(なんと年間乳房当たり6000リットル!!)、病気にもなりません。抗生物質入りの飼料を与えないからかしら(これは冗談)。でも、子牛たちにはちゃんとお母さん牛(それ用に乳母牛を飼ってるんです)のお乳を与えてるし。そのうち、チーズ作りに挑戦したい。成功したらぜひお送りします。
 学園にはあと大きな果樹園があります(お酒はお好き?最高の葡萄酒を作ってるの)。実はまだ行ったことはないけど。本当のところ他のことで手一杯。作業はどれでも好きなことを(つまりどこでも好きな場所で)すればいいんです。係りは特に決ってないし、当番制でもありません。別に何もやらなくったっていいの。でもそんなもったいないことできません。係りはすごく一杯あって、卒業までかかっても、全部するのは絶対無理みたい。例の若先生(先生たちももちろん作業に従事します。だって食べないわけにはいかないから)は、学生時代にやれなかった係りを残らず平らげるつもりらしいわ。でも何年かかることやら。
 作業は授業ではないから、特別な先生はいません。先輩やたまたまその作業に従事してる先生から、私たち新入生はやり方を教わるって寸法です。もちろんしばらくすると、今度は私たちが誰かにそれを教える番になるという訳。その「誰か」は、他の新入生や、もちろん先輩やたまたまその作業に従事してる先生だったりします。








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