結合通信 11:

 結合農場の仕事で、一番難しくってエキサイティングなのは「開墾」です。
 新しく農場を作る/広げるには、農場を構成する「要素」、例えばニワトリやいろんな畑や働く人……など、をうまく結び付けて、「楽」することが大切です(でないと馬鹿みたいに働くばかりということになります。「晴耕雨読」なんて夢のまた夢!)。それにはいまある農場がヒントになります(実際働くことで、生かされてる知恵や技術を「読む」ことができます)。
 「結び付き」を考えるには、例えばニワトリについて、私たちが知っていることを、どんなことでもいいから、できるだけ残らず出し合います。色、大きさ、重さ、寒さの強さ(暑さの強さ)、子育ての仕方、肉の美味しさ、飛べない(あるいは飛ぶ)性質、引っかくこと、喧嘩の仕方、餌の食べ方、……。そのために何日も、ニワトリを観察することもあります(同じように畑や森や人が働いているのを観察することもあります)。ニワトリのいろんな性質がどんな意味・機能を持つか調べたり考えたりします。たとえば、色の薄いニワトリは、色の濃いものよりも暑さに強いことが分かります。体重の重いものは、軽いものほどは飛べません(あたりまえ!)。品種によって子育てが下手だったり、余計に憂鬱になったりします。他に、体温が高いこと、糞はよい肥料になること、1羽づつ飼うよりも数羽づつ飼うのがよいこと、ニワトリは餌を食べること、しかも何もやらなくっても勝手にみみずや何かをつついて食べることなんかが分かります。
 こういうことが分かっていると、ニワトリ小屋をどこに作れば良いか考えるときに参考になります。人間の住居とニワトリ小屋との間に畑を来るように小屋を置けば、ニワトリの卵を取りに行く途中で畑に立ち寄り、野菜屑を集めてってそれをニワトリ小屋の周りにまき、小屋から卵を持って帰る途中、今度はいっしょに鶏糞を畑に運ぶことができます(あたまいい!)。ニワトリは普段放し飼いで、餌も多くは自分たちで探してもらいます。小屋に入るのも自由にやってもらいます(小屋は出入り自由な作りにします)。結合農場には、(大温室のほかに)ありあわせの材料で作った小温室が沢山あって、それらの温度調節に「体温が高い」ニワトリを使います。小温室とニワトリ小屋は(作物が勝手気ままにつつかれないように)金網で仕切りがあるだけで、実は一つの建物になっています。夜寒くなるとニワトリは自分で小屋に入って、その体温で小屋(温室)の内を温めます。夏の昼など暑いときは、ニワトリは自分で外に出ていて、温度が暑くなりすぎないようにします。それがちょうどうまくいくような数ごとに、ニワトリは分けて飼われる訳です。
 結合農場では、人間だけが働くのではありません。(どちらかというと、人間はあまり働きません)。牛や豚やニワトリやヤギなどは、適当な場所に放し飼いすることで多くの仕事をしてくれます。野放図に放すとやりすぎてしまって、作りかけの野菜を食べたり、森を破壊したりしますが(特に山羊は木の皮、豚はどんぐりなんかが大好きで、徹底的に下から生態系を破壊してくれます)、でもそれもうまく使うことができます。実際森を開墾するには、斧を振るったりチェーンソーを使うことはありません(火も放ちません)。開墾したい地域の木にヤギを2匹か3匹紐でつないで置いておきます。何日かしたら、場所を移動してまた別の木にヤギをつないでおくのです。しばらくしたら、地域を小さく分割して囲いをし、その中に鶏を入れて飼います(ブタでも可)。雑草を食い尽くしてくれたら(当然その場所にはかわりに鶏糞がまかれていることになります)、ニワトリはまた別の囲いに移して、きれいになった部分には小さくてすぐに収穫できる野菜を植えます。これをくりかえすと2年で0.5haの土地が鶏40羽で開墾できるということになります(肥料もまく動物トラクターを使った、気の長くて一番てっとり早い開墾!)。








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