「もし」のご褒美

別名したら/してよいという契約
用途子どもから協力を引き出す

子どもと合意を取り結ぶ

用例子どもが特典を要求するとき

親が、子どもに何か課題をさせるのに、励ましが必要だとおもうとき

使用法〜したら(交換条件)、〜してもいい(特典)、という約束について話し合い、親子で合意を結ぶ。

つまり子どもがなにかしたいこと/ほしいもの(特典)があって、親のところに来たならば、そして親の方も子どもの方に何かしてほしいこと(交換条件)あるならば、「(子どもが)してほしいことをしたら、要求をかなえる」という契約をむすぶことができる。

(例)

・洋服を着たら(交換条件)、テレビを見ていい(特典)

・靴下と靴を履いたら(交換条件)、外に遊びにいっていい(特典)

・宿題をやってしまったら(交換条件)、買い物に一緒にいこう(特典)

もし子どもが交換条件である行動や課題をやらなかったら、親は特典を与えない(子どもは特典を得られない)。どちらもマイナスはない、ゼロとゼロだ。

取引を円滑に(もめごとなく)すすめるためには、交換条件や特典以外のことについて脇道に逸れるそうになっても、それは無視すること、子どもが課題にとりかかったらすぐに褒めること(これは特典とは別口で与えられる)、そして特典となるものはすぐに用意できて与えられるようにしておくこと(または、すぐに与えられるものにしておくこと)が大切である。もちろん特典は品物でなくてもよい。子どもがやりたいと思っている行動でもよい(この場合は、ただ許可をあたえるだけでいい)。

 そして、親にとっては交換条件となる行動や課題は、それほど本気にならなくてすむ(やってくれても、やってくれなくても、どちらでもいい)ものに、最初のうちは限っておくと、子どもが交渉にのってこなかったり、約束したにもかかわらず課題をぐずぐずやろうとしなかったりしても、冷静で得られる。

繰り返すが、もし子どもが交換条件である行動や課題をやらなかったら、親は特典を与えない(子どもは特典を得られない)。どちらもマイナスはない、ゼロとゼロなのだ。

解説ここでいう「特典」は、特別な機会や品物で、(もちろん)子どもが好きで、親の方も喜んで与えられるもののこと。

つまり、子どもにとっても、親にとっても、適正な品物や機会である必要がある。

どれだけささいなものであっても、子どもにとって大切なもの/ことであるならば、交渉は成立する。

これをワイロに似ていると思う人がいるかもしれない。しかし、本物のワイロは、利益があるように見えても、常に弱点がある。というのは、ワイロの額は、<受け手(収賄者)>から次々に出される要求のために何回も引き上げられるものである。双方に「わるいことをしている/他にばらされたくない」という弱みがあるために、その要求は、断ち切りがたく、ワイロはエスカレートしがちである。

一方、両者が契約から得たいと思っているものの見返りとして、何かを与え合うという本当の契約では、両者ともに契約を交わさない自由、あるいは取り下げる自由がある。そして一方が契約を果たさなかった場合、もう一方も契約を果たす義務はない、ということを了解している。これは、ワイロではなく、契約のプラスの面であり、年長の子どもたちが公明正大で正直な人づきあいを学習するのに役立つ。

あなたがしてくれたから、おかえしに、わたしもしてあげる、という互酬とよばれる行為は、人間社会の紐帯であり、社会生活の基盤である。

参考文献「読んで学べるADHDのペアレントトレーニング」(シンシア・ウィッタム、明石書店、¥1800;ISBN: 4750315524)

邦訳名に偽りあり。ADHDの本ではない。むしろADHDをも含めたすべての子どもと親に役立つ、ペアレント・トレーニングの名著。記述がシンプルで、1章づつ試しながら、読み進めるのがよい。


to Home





inserted by FC2 system