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           読 書 猿   Reading Monkey
            第79号 (あおむきくらしむき号)
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■■大乗和子訳『ノストラダムス大予言原典 諸世記』(たま出版)===■amazon.co.jp
■■竹内実訳『毛沢東語録』(平凡社ライブラリー)==========■amazon.co.jp

 この『諸世記』は、仏和対訳で、ヘンリー・C・ロバーツやジェーン・ジャ
クソン(有名な女性占星術師)やエドガー・ケイシー(天才的預言者、バージ
ニアビーチの眠れる賢人)などの解釈がいちいちついている豪華版である。
 さて件の預言であるが、そのジャクソン夫人の解釈によると「アンゴルモア
の大王」が

   1999年、モンゴロイドのマオが世界を席巻する

ということになるらしい(笑)。

 しかし好事魔多し。当の毛沢東(マオ ツオ トン)は、

   調査なくして発言なし

と言っているではないか(笑)。


■■町田貞子『暮し上手の家事ノート』(三笠書房)==========■amazon.co.jp

 いわゆる「奥様雑誌」の節約特集は、あまりにせこく、みみっちく、「貧し
さ」と直面させられるみたいで読んでてつらい。さくらももこがどこかでくさ
してた、「キュウリにハチミツかけて、あらメロンの味がする!」にどこか通
じるものがある。顔をおおいたくなるような「手抜きのすすめ」もあって、一
言で言えば「人の道」に外れている。
 しかし、この本のレベルは高い。「クロワッサン」の特集記事や掲載される
悩み事のレベルが「婦人の友」にはるかに及ばないこと以上に、それは明らか
である。ここには「せこさ」の微塵もなく「シンプルさ」があり、「みみっち
さ」のカケラもなく「合理性」が存在する。家事労働の達する高みがある。
 しかし、この本のレベルは高い。すべての人にこのレベルを要求するのは酷
な話だ。世の中には「私もダンナじゃなくて嫁さんが欲しかったんだ」と言え
なかったばっかりに、今では「主婦バッシング」で糊口を凌いでいる人もい
る。
 しかし、すべての生活者にこの本は役に立つ。この本のレベルは高いが、す
べてを実行に移せなくてもかまわない。知恵はいくらでも、そしていくらかづ
つでも盗むことができるのである。


■■池田晶子『魂を考える』(法蔵館)============■amazon.co.jp

A:池田晶子を哲学者と呼ぶのは、香山リカを精神分析医と呼ぶようなもの
だ。
B:え?エッセイストじゃないの?
C:香山リカを精神分析医と呼ぶのは、井沢元彦を歴史家と呼ぶようなもの
だ。
B:え?言語学者じゃないの?
A:井沢元彦を歴史家と呼ぶのは、舛添要一を政治学者と呼ぶようなものだ。
B:え?ナイフマニアじゃないの?
C:舛添要一を政治学者と呼ぶのは、浅利慶太を演出家と呼ぶようなものだ。
B:え?総会屋じゃないの?
A:浅利慶太を演出家と呼ぶのは、大前研一をエコノミストと呼ぶようなもの
だ。
B:え?生活者じゃないの?
C:大前研一をエコノミストと呼ぶのは、木村太郎をジャーナリストと呼ぶよ
うなものだ。
B:え?NHKから天下りじゃないの?
A:木村太郎をジャーナリストと呼ぶのは、竹村健一をセンセイと呼ぶような
ものだ。
B:(笑)ごめん、ワンパス(笑)
C:竹村健一をセンセイと呼ぶのは、梅原猛を学者と呼ぶようなものだ。
B:なんで、ペンクラブ会長なの(笑)?

■■石橋湛山『湛山回想』(岩波文庫)=================■amazon.co.jp

 この国で「自由主義者」といえばたいてい「便乗ファシスト」と相場が決
まっているが、湛山はめずらしく本物のリベラリストである。
 第一次大戦で漁夫の利を得て戦後それを国際的に承認させた日本が、外には
帝国主義、それを背景に内には「大正デモクラシー」を謳歌していたその時
に、あるいは「帝国主義批判」がコミンテルンからやってくる「お題目」でし
かない時代に、湛山は日本を憂いて植民地の放棄を称えた。
 田中角栄はかつて「わが党(自民党)は国民政党である。だから共産主義者
以外はどんな者でも入れる」と豪語したが、湛山はロシア革命の時に『過激派
を援助せよ』を書いた。戦後、湛山は自民党から総理大臣になった。


■■杉山尚子ほか『行動分析学入門』(産業図書) ============■amazon.co.jp

 行動分析学は、(数多くの自然科学的な実験によって確かめられる)科学的
基礎を持った唯一の心理学である。別の言い方をすれば、それは「心理」学で
はない。むしろ積極的に「心理」的な見方(偏見)と戦っている。
 我々はある人の行動に注目する、あるいは問題にする場合、「何故、彼/彼
女はそうするのか」と考え、その原因を彼/彼女の「心」に求める。彼は何故
サングラスをかけているか?「自分に自信が持てないからである」。何故人は
煙草を吸うのか?「死への願望があるからである」。何故あの子はいつも癇癪
を起こすのか?「自己実現が低いから」。なぜ暴力を振るうのか?「抑圧感が
高まり、教師や器物に対してストレスを衝動的に発散させているのだ」等な
ど。
 あまりにも多くの無益な時間と労力が「自己実現」や「抑圧」の名の下に費
やされてきた。原因は「心」にある!行動の問題は、いつも「心」の問題とし
て片づけられてしまうのである。しかしその子があばれるのは、あばれるとい
う行動が人々の注目を引き起こしているからではないか。非難がましいもので
あったとしても、人々の「注目」は行動を強化する「アメ」にあたるものかも
しれない。スキナー箱に入ったハトは、ボタンを押すと結果エサが得られるこ
とで、ボタンを押す行動が強化される。あばれるその子は、注目を得られるこ
とで、あばれるという行動が強化されるのである。
 行動分析学は、行動を問題とする。ある行動が反復されるのは、その行動の
効果(結果)に原因があると考える。「心」「無意識」といった不必要で混乱
を招く余計な概念を分析に挿入したりしない。自分たちででっちあげた「心理
的問題」の解決にやっきになったりしない。加えてもっとよいことがある。行
動分析学は、普通「心」がない(あるいは未発達)と考えられる動物や赤ん坊
にも適用可能である。話もできない相手にも行動分析学は適用可能である。ニ
ワトリにピストルを打たせたり、ミルクを吐き出す赤ちゃんをレモン汁で行動
修正したり、自閉症と呼ばれる人が言葉を使えるようにし、分裂症と診断され
た人を問題行動が少なくなるようにする。
 行動分析家は人を分類してラベルをつけたりしない。依存症というラベルを
つけることは、行動(依存)の原因をその人の精神や遺伝的な要因に求めるこ
とになるからだ。結局は犠牲者である「依存患者」を責めるだけで終ってしま
う。精神的に弱い、自覚しろ反省しろとは、メンタリズムに捕らわれる人の常
套句だ。
 この本は、我が国で最初の(それも1998年出版、いかにこの学問が日本で嫌
われているかよくわかる)行動分析学の専門書である。

 当然、「自分さがし」なんぞには何の役にも立たない。


■■リチャード・キャメリアン『洗脳の科学』(第三書館)========■amazon.co.jp

 この手のものとしてはいささか古いこの本には、行動主義心理学(行動分
析学)及びその創始者スキナー博士が、洗脳(マインド・コントロール)の技
法開発の主役として登場する(ほら、ここでもすごぶる役に立ってる!)。
 もっともスキナー博士はそれを「行動修正」と呼ぶのであるが。


■■川島武宜『日本人の法意識』(岩波新書)==============■amazon.co.jp

 かなり昔の本である。だから昔の話をしよう。
 子供の時、どういう訳か母親に「アメリカ人とはどういうものか?」と不躾
な質問をしたことがあったらしい。母親は答えた。「他人が少しでも自分の敷
地に入ると問答無用で撃ち殺す人たち」。
 後日、似たようなエピソードをこの本に発見した。



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