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           読 書 猿   Reading Monkey
            第72号 (デザインゲーム号)
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■■『図詠詳註聊斎志異』(世界局印行)=================■
 
 中国で出ている『聊斎志異』だが、特徴はタイトル通り、挿絵が入っている
ことである。
 しかしまあなんというか。
 『聊斎志異』といえば、いわば怪異譚である。いわばどころか、『聊斎志
異』というくらいなのだから、聊斎が怪異を記したのであるが、だから、話の
中では幽霊に襲われたり狐に魅入られたりするわけだが、この挿絵というのが
全然そういうおどろおどろしいものではない(もっとも、『聊斎志異』もおど
ろおどろしくはないのだが)。中国風の線描で端正に描かれた挿絵は、のんび
り、ほのぼの、しめやかとか、落ち着き、平静といったものをテーマに描いて
いるかのようだ。これだったら、水木しげるにでも依頼した方がよかったので
はないか(ともあまり思わないが)。あるいはそれとも、中国の怪異というの
は実はこういうものなのだろうか。
 しかも、その図は実は挿絵ではなく、すべて口絵なのである。つまり、巻頭
にまとめて、しかも一頁に四つ分づつ、ぎゅうぎゅうに収められているのであ
る。しかも律儀なことは律儀この上なく、ごくごく短い小品まで含めて、四百
四十四話すべてに一枚づつの絵が。
 因に『聊斎志異』の邦訳は、子供向けにリライトされたものがいくつかある
他、平凡社から単行本で、角川からは文庫ででている。岩波文庫で最近出たの
は、抄録である(と思う。実は見てない)。


■■坂田靖子『伊平次とわらわ』(潮出版)===============■amazon.co.jp

 坂田靖子のバケモノものは、大抵の場合、人間のカゲが薄い。「バケモノも
の」なのだから当然といえば当然だが、人の都合(これはストーリーテラーの
都合でもある)をまるで考えない気ままなバケモノたち相手に、人好きする
(バケモノ好きする)人間(主人公)は翻弄されまくりながら、狂言回しをつ
とめる。損な役回りである。
 ところで、この作品はちょっと違う。主人公の相手はやはり、人の都合をま
るで考えない連中(バケモノたち他)だが、主人公がちょっと違うのである。
つまりちゃんと主人公している。バケモノと一通り渡り合う能力を有し、それ
に加えて(こっちがより重要なことだが)時には相手や事態に対して押しとお
すべき我を持っている。ちょっとしたものであっても自分の倫理観や意志を通
すために、自分の力をバケモノ相手に振るうなんてことが、坂田靖子のバケモ
ノものにあっただろうか(いや、あったかも)。しかも、単行本の表紙に入る
ようなキメのセリフまであるのである(それにしても坂田靖子であるが)。こ
れではまるで主人公みたいじゃないか。ということは、これはまるで活劇じゃ
ないか。と、思わず「主人公の要件」なるものを確認してしまった。
 坂田靖子ファンとしては邪道かもしれないが(そんなことかまうことはない
が)、わたしは彼女の活劇が好きだ。


■■プルースト『百科全書』(岩波書店)=================■amazon.co.jp

 考えて見ると、ディドロ(『百科全書』の編集者である)のやったこととい
うのは、今のわれわれにはとても分かりにくい。
 例えば、今われわれは「百科事典」といえばどんなものか知っている(はず
な)ので、いわばそれは自明のものだが、ここで云う『百科全書』というの
は、フランスの啓蒙時代(18世紀)にディドロたちが編集した「知の金字塔」
のことである。それ以前には、知識というのは坊主(知識人)のものだった
が、それがこの『百科全書』によって一挙に流出し(というのは嘘で、こんな
高いものが誰にでも買えるわけはない)、フランス革命にも大きな影響を与え
た(ということにしておくと整理がしやすいというだけの話だが)ものであ
る。という説明がないと(あっても)、どうしてディドロが(マルクスをして
「人類最大の頭脳」と言わせた彼が)生涯をかけて(島崎ではないが、その貧
乏のために子供を亡くしたり、家庭を不和にしたりしながら)『百科全書』に
打ち込んだか分からない。
 他にも、ディドロの代表作としては遺作『ラモーの甥』などがあるわけだが
(これもまた、これを読んだゲーテが驚き、自分でドイツ語に訳して出版した
もので、それが『ラモーの甥』の最初の出版である。フランス語原版が出たの
はずっと後)、これも、われわれはすでに「小説」っていうものを知っている
から、それだけに却って分かりにくい。「小説」なのか、「戯曲」なのか、随
筆なのか、そういうどうでもいいことを考えるだけ無駄な、そういう方向へと
われわれを押しやるようなシロモノである。
 『ラモーの甥』だけではなく、つまりそれはディドロそのものにも当てはま
る。小説のようなものも書けば、哲学エッセイのようなものも書く、むろん戯
曲も書く。翻訳で飯を食っているかと思えば(『百科全書』の企画も、最初
は、イギリスで出ていた辞書をフランス語に翻訳するということだった)、エ
ロ本のようなものを作って小遣い稼ぎをする(『おしゃべりな宝石』というの
があるが、これは、ぶっちゃけた話が宝石=性器がべらべらしゃべる話であ
る)、むろん『百科全書』を作ったり、そのために工場に見学にいったり(デ
ィドロは技術に注目していた)、ロシアの女帝(エカテリーナである)のブレ
ーンになったり、それが全部でディドロである。
 しかし、結局ディドロと云えば、中途半端な小説家で、浅薄な思想家で、挫
折を繰り返したエディターで、ということになる。始め親友で、後に敵になっ
たルソーの頭の悪さから来る充実に比べて、なんという物足りなさだろう。
 で、この本、某小説家と同じ名前のフランスの学者さんが書いた『百科全
書』という本は、すごく情報量があって、いい本なのだが、これを読んでも、
『百科全書』というのがいったい何だったかというのはさっぱり分からないの
である。そうすると、実のところ、『百科全書』というのは未だ存在しないの
ではないか(『百科全書』というのが一つの本とかではなくて、一つの理念と
それを体現する運動であるというのはそういうことだ)とさえ思えてきたりも
するのである。
 因に著者は、(後にアルチュセール派になるが)フランスのマルクス主義者
で、実は、フランスでディドロ研究をちゃんとした形で始めたのがこの人なの
である(日本でも、フランス18世紀のことを研究している人はたいていこの人
の弟子か友達である)。学位論文を仕上げた後に、一般向けの啓蒙書として
(でも程度は高い)書いたのがこの本である。

■■小林正『フランス語のすすめ』(講談社現代新書)============■amazon.co.jp
 
「フランス人はとてもだらしがなくて、朝、起き抜けに、顔も洗わず、歯も磨
かないで、ベッドの中で、牛乳をたっぷり入れたコーヒーを飲むのが、この世
の極楽だと思っています」と、あるのには笑った。

■■手塚治虫著『きりひと賛歌』(講談社手塚治虫全集他)==========■

@そりゃブンモウだもの(笑)
*ブンモウだしね(笑)
#ブンモウ?(^-^;
*「文盲」をブンモウと読んだ、という(笑)
#(^-^;(^-^;(^-^;ひゃはは>ブンモウ
*で、「ブンモウ」って雑誌をつくった(笑)
#これからそう呼ぼう。>ブンモウ
%え? ぶんもうじゃないの?
@そいや、手塚治虫の漫画で「もんもう病」ってのがあったね(笑)
#そんなん、病気にするし(^-^;>文盲
*手塚もひどいね(笑)
%ほんとは何てよむの(^^;)
#「もんもう」だよ(^-^;
%(;_;)
@顔が犬になる(笑)>手塚
%原因はミズでしょう
*ひどいね(笑)>犬
#ひでーなー(^-^;>手塚
@そんで、見せ物に売られるの、主人公が(笑)>手塚
#酷すぎる(^-^;>手塚
%たしか、なんかの公害がモデルになってんじゃねーかって先生がいってたし
@だって、手塚ってみんなそうじゃない(笑)
%あぶらのなかにとびこんで死ぬ女がいるのよね
@いや、人間テンプラっていう芸の女なの(笑)
#おお、芸人だな(笑)>女
%途中までしか読んでないけどあれは、読めない
*ひどすぎる(笑)
%しっぱいして死ななかった?
@いや、怪我するだけだったと思う(笑)*
%あらら
%最近ね頭が霞がかってるの
#何にせよ、酷いな(^-^;

注* 実は死ぬのである。

■■ポワロー『詩学』(岩波文庫)===================■

「理性・良識から逸脱してはいけない。妙な独創性を発揮して奇怪な思想を詩
に盛ってはならぬ。」
「詩歌の道には中の位ということがない。中は即ち下の下である。」
「仲間ぼめに安心することなかれ。」
「真人間であることが詩人たることよりももっと大切である。」

 ぱちぱちぱち。


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