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           読 書 猿   Reading Monkey
           第18号 (全体主義の起源号)
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■■小松左京『妄想 ニッポン紀行 高天原〜伊勢〜出雲』(講談社文庫)==■amazon.co.jp

 最近の若いもんは小松左京も知らないとのことで、かえって漫画家のとり・
みきが学生時代に小松左京フリークだったというので、その小松左京というの
はいったい何だということもあるそうである(もっとも、最近の若いもんはと
り・みきも読むまい)。小松左京のものは今文庫でどれくらい読めるのだろう
か。むろん、この『妄想 ニッポン紀行』も今は品切れでだろうと思う。別に
惜しくはないが(笑)。
 小説仕立てのこの紀行文の最初に取り上げられているのは瀬戸内であるが、
最後にはその瀬戸内が切り取られて永久保存されるという落ちがついている。
となればこれは小松左京の小説にはお馴染みのテーマで、実際、小松左京の小
説では国土(特に関西ないし大阪)・国家の独立(切り離し)や建設というモ
チーフがしばしば現われている。
 SFの歴史的な起源の一つにはユートピア(ないしディストピア)小説がある
が、その意味では、小松左京の小説にはそれが正確に反映されていると言え
る。というのは、ユートピア小説というのはほとんどがその国の現状に対する
批判的な視点を持つ理想主義者によって書かれているからで、実際小松左京の
書き物には(エッセイも含めて)そうした視点が濃厚にある。彼のSFでは他
に、例えば『ゴエモンのニッポン日記』などがその系譜の上の代表作だと言え
るだろう。その中で取り上げられている問題は今でもそのまま通用するところ
が情けない。別になくなっても惜しくはないが、もっと読まれてもいい。
 ただ、小松左京がユートピストと異なっているのは、彼が単なる理想主義者
ではないことである。少々浮かれている時期もあったが。

■■シャルル・フーリエ『四運動の理論』(現代思潮社)==========■amazon.co.jp

[上 巻]
        
        |
        |//序文//
        |
        |p11
        | ……私は文明人にとってまったく新しい一つの真理に注意を
        |喚起する。すなわち、社会的、動物的、有機的、物質的という
        |[四運動の理論]こそは、理性の企てるべき唯一の研究であっ
        |たということである。
        |        
 その通りだ! | ……諸天体の住民はこの問題を解決してからでなければ幸福
        |に行きつくことができない。
        |        
        |p12
        | ……今後はただひとつの議論のみが文明人の関心を奪うはず
        |だ……
        | ……その議論とは、私が本当に[四運動の理論]を発見した
        |のかどうかをたしかめようとするものである。
        |        
        | ……というのは、それが確かである場合、……この地球はお
        |ろかあらゆる天体の上に起こりうるもっとも驚くべき、また
        |もっとも[幸運な出来事]の準備をせねばならないからであ
        |る。
        |         、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 突然の移行! |その出来事とは、[社会的混沌から普遍調和への突然の移行]。
        |
         
        |//予説//
        |        
        |
        |p13 
        | 文明諸国民の軽率さについて。
        | 彼らは運命の理論への前進に役立つ二部門の研究を忘却ない
        |しは軽視してきた。
        |        
 運命と    |        、、、、     、、、、 
 農業組合   |その二部門は、[農業組合]および[情念引力]の研究である。
        |        
        |p14
 フーリエと  | 人々は、いままでに得た知識が今後残されている知識の4分
 分数     |の1そこそこにすぎないことを、思い知ろうとしている。
        |
         
        |//予告される発見の導きとなった指標および方法//
        |        
        |p20
どんな訳なのだ?| ……そんなわけだから、いかにも運命と関係がないように見
        |えるはずの主題について、私は論をすすめてゆきたい。すなわ
        |ち[農業組合]である。
        |

        |//農業組合//
        |
        |p24
注意!!    | ……要するに、いまや人類の境遇を変えようとしているこの
情念は変化しない|農業組合の理論は、万人共通の諸情念にとり入って、利益と逸
        |楽とを餌にそれを誘いこむものである。
        |        
        |p25
        | いそいでこの新秩序のことを知らせるにはあたらないが、私
        |はこれに[累進セクト]または[集団系列]、[情念系列]と
        |いう名を与えよう。
        |        
        | ……これらのセクトの配置はあらゆる点で幾何数列のそれに
 ノートAを  |似ている。それらは幾何数列の特性をすべてそなえており、た
 参照せよ   |とえば、系列に属する極限の集合と中間の集団とのあいだの対
        |抗の均衡がそれである。
        |        
        |p27
        | 今日の所帯においては、子供達は騒いだり、物を壊したり、
        |喧嘩したり、勉強をいやがったり、そんなことばかりに熱心で
        |あるが、そのおなじ子供達を[累進セクト]または[集団系
 すばらしい! |列]に入れてやった場合、うるさくいわないでも競って仕事に
        |精を出すようになり、よろこんで耕作や製造、学問や芸術を学
        |ぶようになる。
        |        
 はっはっ!  | ……父親たちがこの新秩序を見たら、自分の子供達がセクト
        |の中では感心だが、不統一所帯のなかでは憎らしいと知るであ
        |ろう。
        | 

■■門谷建蔵『岩波文庫の赤帯を読む』(青弓社)=============■amazon.co.jp

 なんか「岩波文庫の赤帯を読む」とかいう本が並んでいたので手に
取ったら馬鹿であほで間抜けで目が無くて頭も無くて脚力だけあるやつ
が書いていたので今度殴ります。またひとつ少年の夢を壊してしまうよ
うな輩が増えるってわけだ。ライターになりたいなんて死んでも言えな
い世の中だね。こいつ買い取りじゃなくて印税方式だったとしたら世の
中間違ってるね。でも誰も買わないか。しかし買い取りだったとしたら
とりあえずこいつ書いた分だけ金貰ってんだよな。むかちゅく。

 それにしても、こんだけ物わかってないやつがなんで岩波の赤帯全部
なんて読むんだ? まだ岩波の権威なんてもんが生きてるのかしらね?
「岩波の赤帯を全部読んだら俺にも文学がわかるのだろうか」みたいな
感じでさ、このタコ、もう三十年前に死んでるね。

 赤羽のブックス談に行くたびに朝日選書から出ている井上一馬とか言
う馬鹿であほで消えた方が世のため人のため将来をめざす翻訳家の卵の
ため将来を目指すライターの卵のためなやつの本が平積みになってるの
がしゃくで、とにかく目障りで、だからその上にいつも脇においてある
江藤淳の「漱石とその時代 4」を積み重ねて目に付かないようにして
いたのだが、こいつの上には何を積んでやろうか。脇においてあるのが
渡辺直巳の「作家になりたければ漱石に学べ」とかなんとかいう本なの
だが両方まとめて上に伊藤整の日本文壇史全部でも置いてやろうか。今
全巻フェアやってるしさ。

 思ったのは岩波赤帯全部(たぶん全部じゃないと思う、昔の絶版のや
つとかはこいつにはわかんねえだろう、きっとハウプトマンくらいで根
を上げるんだぜ)読んで出版社に持ち込めば本が出せるなら、今の時点
でもう誰だって本なんて出せるってことなんだよね。やりたければ。
あーもうあほらし。

 それで皆様も地元の書店にお寄りの際は、井上一馬とこの「岩波文庫
の赤帯を読む」の上にもう少し青少年のためになりそうな本を積んで目
隠しをしようという運動にご協力のほどお願いしたいのですがいかがで
しょうか。この際ならばフランス書院文庫全部などでも結構ですし、マ
ン島布教協会の協力と言うことで「マン島物語」でも結構です。菅野美
穂写真集が置いてある書店ならばそれがよろしいでしょう。是非御一考
のほどお願いいたします。

 しかし岩波文庫のやつ、ほんと宝の持ち腐れ。そんなにつまんない本
があるのなら、全部私にくれ!(←これが一番言いたいことだね)


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