=== Reading Monkey ===============================================
読 書 猿 Reading Monkey
第124号 (グッドラック号)
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■読書猿は、全国の「本好き」と「本嫌い」におくるメールマガジンです。
■■ベルタランフィ『一般システム理論』(みすず書房)==========■
■■サイモン『システムの科学 第3版』(パーソナルメディア)======■
■■ライプニッツ『単子論』(岩波文庫)=================■
システム論の本は、たいてい体系的でない。
■■マーチンデール『現代社会学の系譜』(未来社)============■
マルクス主義は、ロマン主義と野合した唯一の社会主義である(by D.マー
チンデール)。
日本では、マルクス主義は、文学者にも取り回しできる唯一の「社会理論」
だった。
■■稲垣吾郎『馬耳東風』(集英社)===================■
人間到るところ青山あり(by キルケゴール)。
■■レイブ&マーチ『社会科学のためのモデル入門』(ハーベスト社)====■
現在、重版準備中(by ハーベスト社)
■■C.L.ストング編『アマチュア科学者』(白揚社)==========■
未だに捜索中。
■■ベル『英国住宅物語―ナショナルトラストの創始者オクタヴィア・ヒル伝』
(日本経済評論社)==■
122号で触れた オクタビア・ヒルの伝記は、翻訳が出てました。
■■D.ハーヴェイ『ポストモダニティの条件』(青木書店)========■
ポストモダンとは、郊外の断念である(うそ)。
■■W.ヤング『アイデアのつくり方』(TBSブリタニカ)=========■
社会科学を勉強しろ、と書いてある(ほんと)。
■■久恒啓一『できる人になるには勉強してはいけない!』(青春出版社)===■
この人の勉強はたいしたことない。(図の本もくだらない)。
■■クリスティ『パーカー・パイン登場』(ハヤカワ文庫)=========■
「物語要素事典」(http://www.aichi-gakuin.ac.jp/~kamiyama/)には入っ
てないが、「統計学者(統計家)」というキャラクターがある。複雑怪奇な人間
社会を「統計」によって、ざっくりまるごとお見通しだと考え、その通り予想を
成功させてしまう人物である(しかし、最後は主人公の「野生の勘」などに破れ
たりする)。一時は「コンピューター」が、この代わりをつとめていたこともあ
る(ゴルゴ13を追い詰めたこともある)。
パーカー・パイン氏は、35年間、官庁で統計を扱う仕事に従事し、人間の不
幸が5つのパターンに分類できることを把握して、それで退職後、個人事務所を
開いた人物。新しい翻訳では「心の専門家」(笑)と紹介されているらしいが、
パーカー・パイン氏は統計家である(保険計数士アクチュアリーだとずっと思っ
ていたが)。そして、良い方にだまして依頼者の「不幸」を解決する。スタッフ
には妖婦やジゴロやだまし計画のシナリオを書く女流作家なんかが登場する。
ミルトン・エリクソンは、パーカー・パイン事務所と同じことを現実にやって
いる(いた)。
■■総務庁地域改善対策室編集『同和行政四半世紀の歩み』(中央法規出版)==■
もと東京市(のちに東京都)の役人だった磯村英一という人は、都立大学の設
立にも役人として関わったが、その後、その都立大学の教授になった。しかし
「役人あがり」と学内で陰口を叩かれることもしばしばだった。実は、役人時代
には都民生局長などもしていたので(戦前には牛込区(現:新宿区)や渋谷区の
区長もしていた)、教授になった方がむしろ給料は下がった、「だからほんと
は、役人くずれ、なんです」と、この本の冒頭の座談会で述懐している。
■■クレスゲ他編『ハイエク、ハイエクを語る』(名古屋大学出版会)=====■
これなんか読むと、やっぱり、ハイエクは『隷属への道』を書いて、人生を棒
に振ったのだと思う。
(「棒に振った」おかげで、我々は今もハイエクを知っているのだけれど)。
ちなみに、ハイエクが語る周辺の人物たちはどれも最高に俗物である。ベヴァ
リッジ、ラスキ、そしてケインズ。中でもケインズはすばらしい。ハイエクはあ
る時、ケインズの高弟であるロビンソン夫人とカーンの話を当のケインズに向け
た。するとケインズは「あの二人はただのバカだよ。そりゃ1930年代には私の
着想はひどく重要だったさ。インフレと戦うなんて問題はあの頃はなかったから
ね。しかしハイエク、任せておいてくれよ。私の着想はすでに時代遅れになっ
た。私は世論をこんな風に(パチンと指をならして)変えてやるよ」。
「その6週間後、彼はなくなりました」とハイエクは付け加えてる。
■■Hamilton,P.&K. Thompson『The Uses of sociology』(BlackwellPublishing)=■
Uses(利用)から見た社会学には、大雑把に分けて3つの側面がある。
ひとつめはrational-scientific:客観的な科学としての側面。ふたつめは
politicalな側面。科学としての社会学が「社会を知る」ためのものなら、
politicalなそれは「社会を変える」ためのもの。だから特定の価値にコミットす
ることも辞さない(というか客観的な価値自由なんてそもそも無理だという立
場)。そしてみっつめがexpressionistな側面。人間の諸事象を様々な切り口で
切り出し、意味付ける役目を果たす、表現/レトリックとしての側面。人間には
「意味」も「表現」も(スピノザにいわせれば「ウソ」も「はったり」も)必要
なのである。
この3つをまぜこぜにして(あるいは整理できなくて)、怒ったり侮ったり
嘲ったりということはめずらしくない。何も「社会学」だけの話じゃないと思
うけどね。
この本はイギリスのOpen Universityの「社会学と社会」という科目の教科書
のひとつ。
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