重すぎる課題

別名ノー・セット
用途子どもがどうしても言うことを聞かないとき

子どもがすべきことをやらないとき

用例
使用法簡単に説明すると、ちょっと無理難題を押し付けて、それよりは楽な(実はやってほしい)ことをさせるワザです。

(例)

今日に限って、どうしてもお風呂に入りたがらないA君。

なだめても、すかしても、まるでダメ。

ここで「重すぎる課題」が登場です。

パパ「Aくん、すっごく大事なお願いがあるんだけど聞いてくれる?」

A君「・・・」

パパ「お風呂よりずっと大切なことなんだ。Aくん、パパの一生のお願いだ(?)。虫歯になってくれ」

A君「・・!」

パパ「虫歯になったら、すごく痛いだろう。くるしいだろう。もうのたうち回るくらい痛いと思う。そんなことをAくんに頼むなんて、パパも本当はいやなんだ。でもしかたがないんだ。お願いだ。パパ、A君が虫歯になってくれたら、何でもする」

A君「いやだよ。虫歯はいや」

パパ「痛い痛い虫歯だよ。絶対にイヤかい?」

A君「絶対にいや」

パパ「・・・そこまでいうなら、しょうがない。虫歯はパパあきらめるよ。でも、虫歯の代わりといっちゃなんだが、パパ、Aくんに、すっごく汚くなってほしいんだ。みんなから、きたないきたない、くさいくさい、って言われるだろうけど」

A君「・・・」

パパ「ほんと、みんながきたないきたない、くさいくさい、って言うと思うけど、パパも正直、くさいなあ、あっちいってよ、って言うかもしれないけど、A君、お願いだから、きたなくなってくれないかな。汚くなるためには、とうぜんお風呂は禁止だな。もう絶対にお風呂にはいっちゃいけない。どんなに汚くなって、臭くなって、みんなに嫌われても、パパもママもA君をさわるのも嫌がっても、それでもお風呂に入っちゃダメだよ。だって、きたなくなるためには、それぐらいじゃなきゃ」

A君「きたないの、いや。お風呂ダメもいや」

パパ「じゃあ、せめて明日だけでも、すごく汚いA君でいてほしいなあ。みんなは臭がるだろうし、いやがるだろうけど、明日一日のことだよ。今日だけはお風呂に入ってほしくないんだ。このとおり、お願いだ」

A君「いや。お風呂入る!今日もお風呂入る!」

パパ「ど、どうしても、今日、お風呂に入るの?」

A君「入る!」

パパ「まさか、今すぐ入るつもりじゃないだろうな?」

A君「今、入る!」

風呂場へ走り去るA君。

ここまで念入りにしつこくなくても(Noと答えさせるのを重ねているので、ノー・セットといいます)、

・食事をしようとしない子に「ママが見ているときしか、食べちゃダメよ」と言って、子どもから目をそらす。→あわてて、子どもは食べ始める。

・なかなか帰りたがらない子どもに「ママ、帰るから絶対についてこないでね」と振り返らずスタスタ変える。→あわてて子どもはついてくる。

解説いうことをきかせようとすればするほど反抗してやらない場合、いうことをきかせようという努力が、かえって問題行動との間に悪循環ループを形成している(例えばやらない間は、親の注目を独占できる、など)。

このループを切り替えるために、ループの回転に余分な力を加える。つまり、いつもの努力よりも、より大変でかつより無意味なことを「課題」にする。すると、「そんなバカバカしいことやるくらいなら」と、ループを抜けることができる。すなわち、症状がおさまる。

たとえれば、馬を馬小屋に入れるのに、前へひっぱっても抵抗して入らない。逆に、しっぽを後ろに引っ張れば、いやがって前へ進み、すすんで馬小屋に入ることの応用。

参考文献『よくわかる!短期療法ガイドブック』若島 孔文 (著), 長谷川 啓三 (著)価格: ¥2,500,出版社: 金剛出版 (2000/05)


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