自己催眠のエクセサイズ

Self
催眠で一番知りたいのは、自己催眠のことらしい
催眠や暗示な力を、身近に、自分のカラダひとつで体験できる、
Do it yourselfな、あなた自身のための催眠のエクセサイズ。


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 自己催眠は、おそらく催眠初心者にとって興味引かれるテーマであろう。
 純粋に催眠自体に興味がある人なら、自己催眠を通じて催眠がどういうものか、知識ではなく体験として知ることができるし、催眠を応用したい人の場合なら、まず自分に対して「いの一番」に、その成果を使ってみたいだろう。

 他者催眠と同様に、自己催眠にも沢山の方法がある。けれど大雑把にいえば、自己催眠は次の3つの段階に分解できる。

  1. 自己暗示のためのスクリプトを用意する
  2. 自分を催眠に入れる
  3. 用意したスクリプトを使った自己暗示


 実は、どの段階も場合に応じて省略できる。
 「おしきせ」のスクリプトを使えば、1の「スクリプト作成」は省略できる。
 また、特定の効果を目指さないなら、3の「自己暗示」も省略できる。自律訓練法でリラックスを目指す、といった場合は、別段スクリプトや暗示は必要ないだろう。
 さらに言えば、2の「自分を催眠に入れる」ことも、実のところ必ずしも行わなければならない訳ではない。催眠に入らなくとも、自己暗示は、それだけでも効果がある、というのが新ナンシー派のクーエ以来(あるいはアメリカン・メスメリズムの鬼子、ニューソート運動からジョゼフ・マーフィを経てつながる流れ)、そして現在でも自己啓発関係の書籍や能書きに、繰り返し出てくる主張である。

 要するに、自己催眠を3つの段階に分けた理由は、それぞれを「あり」にするか、「なし」にするかだけで、2の3乗=8通りのやり方ができるという話をしたかったのである。もちろん意味がある組み合わせは、そのうち4つほどだが。

自己暗示の
ための
スクリプト
を用意する
自分を
催眠に
入れる
用意した
スクリプト
を使った
自己暗示

あり
あり
あり
自己催眠フルコース
あり
あり
なし
(用意したスクリプトを使わないなんて……)
あり
なし
あり
催眠抜きでも自己暗示だけで効果あり
あり
なし
なし
(単なるスクリプトの作文)
なし
あり
あり
暗示なんて催眠に入ってから考える
なし
あり
なし
リラクゼーションなど催眠に入ることだけが狙い。
なし
なし
あり
(もはやアドリブで自己暗示できる人)
なし
なし
なし
(何もしない do nothing)


 それぞれの段階に、また様々な方法がある訳だが、とりあえず3つの段階ごとに説明して、あとの組み合わせは読んでいる方におまかせすれば、膨大な種類の自己催眠を、省スペースで説明できるという算段である。

1 自己暗示のためのスクリプトを用意する

 この段階は、最後の「3 用意したスクリプトを使った自己暗示」ともちろん対になっている。

 自分を催眠に入れる前に、暗示のことば(スクリプト)を決めておかなければならない、という決まりはない。他の段階と同様、この段階も「なし」にして飛ばすことができる。
 
 逆にいちばんしっかりとやるのであれば、目標(ダイエットだとか禁煙だとか)に応じて、世界中で自分のためだけのオリジナルな暗示スクリプトを「書き下ろす」こともできる。

 0から100まで、今のふたつを両極端にして、かける手間としては0ではないが100までいかない方法がいくつもある。
 説明のためにこの段階も、大まかに2つに分解しよう。

(1) 暗示スクリプトを用意(調達)する
(2) 催眠(トランス)中に自己暗示するための方法を決め、そのための準備をする。


(1) 暗示スクリプトを用意する

 いざ暗示スクリプトを用意すると決めたなら、手間が省けるのは、いろんな催眠本やインターネット上に掲載されている「おしきせのスクリプト」を使うことだ(本ではHammond(1990)を、インターネットではとりあえずwww.hypnosis-japan.orgリンクを挙げておく)。
 
 インターネットで探すなら、催眠で使う文句をスクリプト(script)ということ、自己催眠(autohypnosis,self hypnosis等)や暗示(suggestion)などの英単語を知っておけば、検索エンジンを使えばいくつも見つかる。

世界で(おそらく)一番有名で、なおかつ汎用なのは次のスクリプト
(先に上げた新ナンシー学派のクーエ作)であろう。

Tous les jours, a tous points de vue, je vais de mieux en mieux.

次の英訳が広く出回ってる。

Every day in every way I'm getting better and better.

元がフランス語なので、別の英訳もある。

Every day, all points of view, I go better and better. 

日本語にすれば、どちらも同じようなものだ。

「毎日、あらゆる面で、私はどんどん良くなっていく」


使い方も簡単、このフレーズを20〜30回(これを1日2〜3セット)、一人でぶつぶつ唱えればいい。

 
 催眠家としての自分の技量を上げるために自己催眠したい人なら、既存のスクリプトを自分に使ってみるのは、勉強になる。スクリプトを試行してみるのに自己催眠は使えなくもない。少しずつ変えてみて自己体験し、ゆくゆくはオリジナルのスクリプトを作れるようになるというのは、ひとつのやり方だろう。

 自分(の特性や目的)に向いたスクリプトが見つからないときは、自分で作ることになる。暗示スクリプトの作り方は、別項で概説したが、自己催眠用にはもっと簡単なものがよい。ここではいくつかのコツを紹介しよう。

 試しに、どうでもいい願いからやってみよう、というのはお勧めしない。
 自己催眠の場合、本人が催眠に入りたい、これこれの効果を実現したいというのだから、間接的なアプローチで抵抗を回避するといった必要がない。
 また短い方が繰り返しに便利である。
 10秒から20秒、最大でも30秒以下で唱えられる、つまり文字数に直すと50文字から150文字くらいが適当)。
 ・・・この意味で、自己暗示用のものを作るのは、催眠スクリプト作成の入門によい。

 「〜しない」といった否定形ではなく、
また「〜したい」「〜になりたい」という願望形ではなく(wantは同時に欠乏を意味する)、
「〜になったので、今は○○だ(○○な状態だ)」といった言い回し(場合によってはイメージ)がよく使われる。
 たとえば「今年中にノーベル賞を取る」というのは、まだ研究をはじめたばかりの研究者には、不可能な願いである。「ノーベル賞を取れるくらいの研究をする」というのであれば、いつか可能かもしれない。
 ここで付け加えた方がいいと思うヒントは、有効なのは自分についての暗示であるということ(ノーベル賞級の研究をするのは自分だが、それに賞を贈ろうというのは他人様である)。
 自己暗示は、自分以外の誰かを直接にそそのかし、自分にタナボタを送り届けさせるものではない。他人が変わるにしても、それは自分が変わることを通してである。


(2) 催眠(トランス)中に自己暗示するための方法を決め、そのための準備をする。

 音声による暗示を選ぶなら、録音するための装置を用意する。そして自分または誰かに催眠スクリプトを読み上げてもらう。概して、録音は思った以上に骨が折れる。プロじゃないからつっかえるし、我々のいる部屋は(普段は気にしていないが)録音となると邪魔な雑音が結構多い。満足のいく録音を行うためには、練習やリハーサルもいれてかなりの繰り返しと手間、細心の注意とちょっとした幸運が必要である。

 前項とも重なるが、おしきせの「暗示スクリプトの音声版」もないではない。よく催眠テープだとかCDだとか売っている。
 それらの効果がイマイチなのは、CDがあなたの反応を見て、ファインチューン(微調整)してくれる訳からである(中身がてんでなってないものは別として)。要するに録音テープは、相手が誰であろうと、どんな反応をしていようと、それらを徹底的に無視してくれる。
 録音テープによる催眠は、実はかのクラーク・ハルの夢だった。ハルの学生だったことから催眠研究をはじめたミルトン・エリクソンは、ハルとは反対に相手や状況に応じて変化自在で臨機応変な方法に向かっていった。人間は他のものとは見分けがつくるぐらいには互いに似ているが、同じ催眠スクリプトがまったく同じ反応を引き起こすほどには似ていない。催眠技法を覚えるよりも、相手の反応をちゃんと見て取る方が、催眠家には必要なスキルである。

 じつは、書き下ろした暗示を事前に繰り返し(20〜30回程度)読んでから、催眠に入るという手もある。
 RCT(Randomized controlled trial:ランダム化比較試験)した訳でないので、どちらがどれくらい効果があるのかわからないが、同じやるなら、おしきせのスクリプトでも、1枚の紙に丁寧に直筆で書いてみて(ラブレターを書くつもりで、心を込めて書く、らしい)、それを読む方がよい、という人もいる。催眠に入った後、言葉がイメージとして再生されるのだそうだ(伝聞形で書いているのは、自分ではいまいちうまくいかなかったからである)。
 スクリプトを書いた紙を折り畳んで、ただ手に持ったまま催眠に入るという方法もある。

2 自分を催眠に入れる

 これにはいくらもやり方がある。好きなやり方で(一つが駄目なら、他のやり方で)やってみるとよい。
 「これでいけそうだ」というやり方が決まったら、毎日、そのやり方を(練習のつもりで)続ける。「頑張る」必要はない(というか、努力はかえって力みやあせりにつながりやすい)。
 難しい点があるとすれば、自分ひとりでやっていると、「今、果たしてうまくいっているのか?」がわからない、というところである。そのあたりは、自律訓練法が、暗示と反応が対になっていてわかりやすい(もう少し簡略化された方法もある)。繰り返し多くの人々に使われているので、いろいろコツや問題点などが明らかになっている点もメリットである。ただ目標(とする反応)がきちんと決まっているため、逆に目標が達成できるまでけっこうな時間がかかる場合がある。これが欠点で、指導者なしで自分一人で延々すすまなかったりすると、挫折する人も少なくない。繰り返すが、やり方にはこだわる必要はない。ある方法が難しくても、別の方法だとあっさりできる場合もある。

禁忌


ある種の人々は、催眠しない方がいいと言われる。同じようなリストであるが、次のような場合は自己催眠をやらない方がいいとされている。自己催眠は自分が自分にかける催眠とも言えるが、この場合、自分は「経験が極めて浅い催眠家」であることを自覚しておくこと。あなたと同じ程度の「素人」に、あなたは催眠を頼むとしたら、どうかを確認すること。

(1)重篤で長期に及ぶ精神疾患がある場合
(2)人間関係のトラブルに関した問題を持っている場合
(3)ひとりでぼーっとするのが好きな人の場合
(4)かつて専門家に見てもらって改善しなかった問題に取り組みたい場合
(5)1ヶ月間、毎日15分ぐらいの時間を割けない程度の問題を解決したい場合(他の方法を探した方がいい)
(6)虐待や近親相姦などのために負ったトラウマが隠れている可能性がある場合
(7)明らかにしたい「記憶」に取り組みたい場合(いずれにせよ、記憶をたぐるのに自己催眠を使わない方がいい)。

「自己催眠」を練習する

 多くの自己催眠法では、「練習する」ことを勧めている。
 そうすることのメリットは、より早くより確実に催眠に入れるようになる、ということである。たとえば10分かかっていた催眠導入が10秒でできるようになる。これは、今後一生、自己催眠を使っていくのだとしたら、大きな時間の節約になる。なので「練習する」ことを勧めている。また、自分だけでは催眠に入ったのかどうかはっきりせず、自己催眠に疑惑を持ったままだと、よい成果が得られない。そのため暗示を急ぐのではなく、まずは確実に自己催眠を使えるようになろう、という趣旨でもある。
 一連のステップからなる自己催眠法では、そのステップをひとつずつ確実にやっていくのが「練習」になる。今日は1ステップ目を、それが確実にできるようになったら2ステップ目を……、といったやり方である。下に示した(a)と(b)の方法は、分けるほどのステップもないので、すべてのステップを繰り返しやるだけである。この場合も、最初の数日間は暗示することよりも、催眠に入ることを確実にできるようにつとめるとよい。

(a) エリクソン夫人*の自己催眠(Three Sentence Trance Induction)


(1)自分が見ているもの(視覚体験)について、3つの文章をつくり自分に話しかける。

(例) 「目の前にパソコンのディスプレーがあります。窓から明かりが差し込んでいます。飲み残しのコーヒーカップがあります」

(2)自分が聞いているもの(聴覚体験)について、3つの文章をつくり自分に話しかける。

(例)「パソコンのファンの音がします。時計が時を刻む音がします。浴室の換気扇の音がします」

(3)自分が触っているもの(触覚体験)について、3つの文章をつくり自分に話しかける。

(例)「足の裏があたっている床の冷たさを感じます。ネクタイが首に巻きついているのを感じます。両肩にジャケットの重みを感じます」

(4)こんどは(1)〜(3)を2つづつの文章でやってみる。

(5)さいごは(1)〜(3)を1つづつの文章でやってみる。

・・・どこかの段階で目を閉じたくなるが、その場合は内部的な視覚イメージについて文章をつくること。
このテクニックは最初 視覚+聴覚+触覚で合計9つの感覚に注意を向けていたのが、9個→6個→3個とだんだん減っていくことによって、外界への注意が次第に狭まるのがミソ。あと、実際に感じているものを唱えることで、Truismの効果もある。

(6)最初の数日はトランスに入る感覚をたしかめるのに使う(練習)。

(7)その後は、自分がうまくやりたいと思っている体験、改善したいとおもっていることを選び、
   それがうまくいった経験をトランス中に思い出すように、トランスに入る前に指示を出しておく。
   自信がつくばかりでなく、自分の忘れている経験(無意識)から、必要なリソースが掘り出されるようになる。

*ミルトン・H・エリクソンの二番目にして生涯の伴侶、ベティ(エリザベス)・エリクソンのこと。


(b) もっとも簡単な自己催眠(by河野良和 氏)


(1)何かを手で触ったまま目を閉じる

(2)手に触ったものの感触にしばらく意識を集中する(30秒から数分)。

(3)そうするうちに自然とトランスに入るようになる。



(c) 自律訓練法

 自律訓練法は,軽く目を閉じた状態で,決まった言葉(言語公式)を心の中で繰り返すもの。
 言語公式には次の7種類。ひとつができてから、次の公式に進むとよい。

背景公式  「気持ちが落ち着いている」

第1公式  「右腕が重たい→左腕が重たい→両脚が重たい」 (重感公式)

第2公式  「右腕が温かい→左腕が温かい→両脚が温かい」 (温感公式)

第3公式  「心臓が規則正しく打っている」 (心臓調整公式)

第4公式  「楽に息をしている」 (呼吸調整公式)

第5公式  「お腹が温かい」 (内臓調整公式)

第6公式  「額が心地よく涼しい」 (額部涼感公式)

 背景公式は時間をかけずに4,5回繰り返す。
 スタートをきるための準備段階なので、気持ちの状態を確認できたら、次の第1公式へ進む。
(必ずしも落ち着かなくてもいい。意識を気持へ向けるのが目的。今日はちょっとイライラしてるな、というのでも確認できれば、次へ進む)

 第1公式〜第6公式については、反応が得られたら、次へ進む。
 ひとつの公式にかける時間は2〜3分でよい。逆に言うと、2〜3分で反応が出なければ「練習はおしまい」にすること。「今日は日がわるいや」とでもおもって、次の日にまたやればいい。
 できないのに拘泥して「頑張って」しまうと、かえって気負ったり緊張したりして「できない→緊張→できない→緊張……」の悪循環に入ってしまう。
 時間をおいて、1日3回くらいチャレンジするのは可。
 
 ひとつの公式について2〜3分で反応が得られれば、次の公式へ進む。
 毎日コツコツやっていくと、第6公式まで2〜3分でできるようになるだろう。とりあえずの目標は第2公式。ここまでいけば、リラックスを実感できるし、リラックスできると自信も持てる。先にマスターするには結構な時間がかかると言ったが、毎日練習して2〜3週間で第2段階までいければ筋がよい。

自律訓練法をしない方がいい場合(飛ばした方がいい公式)


第3公式(心臓調整練習)
 心臓に疾患のある人、心臓が気になる人はこの練習を省略。不安や緊張を高めてしてしまう恐れあり。

第4公式(呼吸調整練習)
 気管支喘息,過換気症候群など呼吸が気になる人はこの練習を省略。不安や緊張を高めてしてしまう恐れあり。

第5公式(内臓調整練習)
 糖尿病の人は,薬物療法との併用で低血糖になる可能性あり。主治医と相談した上で実施すること。そうでない場合には省略すべし。
 胃・十二指腸潰瘍、あるいは強い痛みを伴う胃炎の場合は、治療が終わってから実施すること。そうでない場合には省略すべし。
 また妊娠中の人は省略(特に8ヶ月以上)。妊娠中毒症をひきおこす可能性あり。


(d) 筋弛緩法

 自律訓練法でいう「重感(公式)練習」を中心に行うもの。練習をしぼる分、自律訓練法より簡単かもしれない。

STEP1
 (1)右腕が重い (2)右腕がすごく重い (3)左腕が重い (4)左腕がすごく重い (5)両腕が鉛のように重い
 
※各10回心の中で唱える→効果を感じたら、解催眠した後、次へ[(1)→(2)→……]と進む。
 すべてが終わったら、(1)から(5)まで通しで行う。最初は各10回づつ唱える。
 うまくいけば、次第に唱える回数を減らし、各1回づつでできるようになれば、このステップは卒業である。

STEP2
 (1)右足が重い (2)右足がすごく重い (3)左足が重い (4)左足がすごく重い (5)両足が鉛のように重い

 ※同上

STEP3
 (1)まぶたが重い (2)まぶたがすごく重い (3)まぶたが鉛のように重い (4)自然に目が閉じる (5)目がしっかりと閉じた

 ※同上

STEP4
 一、両腕が鉛のように重い。二、両腕が鉛のように重い。三、両腕が鉛のように重い。四、両腕が鉛のように重い。五、両腕が鉛のように重い。
 六、両足が鉛のように重い。七、両足が鉛のように重い。八、両足が鉛のように重い。九、両足が鉛のように重い。十、両足が鉛のように重い。 
 十一、まぶたが重い。十二、まぶたがすごく重い。十三、まぶたが鉛のように重い。十四、自然に目が閉じる。十五、目がしっかりと閉じた。
 十六、息をする度に重くなる。
十七、息をする度に重くなる。十八、息をする度に重くなる。十九、息をする度に重くなる。二十、息をする度に重くなる。
※合計で20回唱えることになる。ただ、一から二十まで、数を数えるだけで催眠に入ることができるようになれば、このステップは卒業である。



他者催眠でもつかう方法も、もちろん自己催眠に使える。
 自分でやる場合は、注意を一点に集中させることが容易なので、凝視法がよく使われる。

(e) 凝視法など

 他者催眠でもつかう方法も、もちろん自己催眠に使える。
 自分でやる場合は、注意を一点に集中させることが容易なので、凝視法がよく使われる。
 見つめるものはなんでもいい。天井のシミを勧める人もいる(見上げると、疲れやすいので、自然に目を閉じてしまうから)。ろうそくの火がいいという人もいる(しかし一人でやる場合は、なおさら倒れないように、ろうそく立てなどを使うこと)。あるいはヒプノディスク(回転する渦巻きに視点が引き寄せられる?)を使う人もいる。こうして並べていくと、どんどん古典的な催眠になっていく。ベルトのキラキラ光るバックルや、物珍しく怪し気な宝石付きの指輪などは、古き良きステージ催眠術師にはよいが、自己催眠向けではない。

ヒプノディスク
hypnodisk
ヒプノディスク


 さて、寝転んでも、楽な姿勢で腰掛けてもいい。2、3回深呼吸をしたら、自分がこれと決めたものをじっと見つめる。3〜4分で見つめ続けたら、目を閉じて、さらに深呼吸をする。
 催眠導入のための簡単な言葉、たとえば「力がぬけた、ほーら」などと心の中でゆっくり繰り返す。
 次は体の力を順々に抜いていく。足の先からはじめて、細かくゆっくりと頭のてっぺんまでいく。くるぶし→ふくらはぎ→太もも→……→腰までは片足づつ、その後、腹、胸、背中、首とすすんでいく。最後に顔の筋肉をゆるめる。筋肉のリラックスが進むほど、催眠に入っていく。
 
 そのあと、階段やエスカレーターのイメージを使って、さらに催眠を深化してもよい。踊り場に立ち、階段かエスカレーターを降りていく、ところを想像する。数を20から逆に数えて1まで、階段なら1段につき1つ減らしていく(エスカレーターも1になったあたりで、エスカレーターを降りる)。必要ならもう1階か2階分、階段(エスカレーター)を降りてもよい。その分、催眠は深くなる。



3 自己暗示をかける

 暗示スクリプトの録音テープを用意する場合、自己催眠導入にかかる時間+数分だけテープを進めてから録音すればいい。無音状態のかすかなノイズが気になるなら、静かな音楽でもバックに流しておけばいい(MDやデジタル録音でも同様)。こうしておいて、催眠導入に入る直前に再生をスタートすれば、催眠に入ってしばらく後に、暗示スクリプトの再生がはじまる。

「わるいところを取り除く」ための、イメージ暗示としては次のようなものもある。
簡単なので、わざわざ録音する必要はないだろう。

  1. 何かの方法で自己催眠。催眠に入る
  2. しばらく催眠状態を味わったら、自分の「悩み」や「治したいところ」に意識を集中する。
  3. こころ系の「悩み」なら、アタマ(たとえば眉間やおでこ)から、「悩み」が風船状になって、ぷくーっと膨らむのをイメージする。
  4. からだ系の「治したいところ」なら、体の「わるいところ」から、「わるいもの」が風船状になって、ぷくーっと膨らむのをイメージする。
  5. あとは、その風船が,自分から切り離されて、どんどん上にあがっていって見えなくなるまで,イメージする。
  6. その後は、またしばらく催眠状態を味わって(すっきり感が感じられたらok)、それから催眠から出てくる(催眠を解く)。
 
なお、イメージするのが苦手な人もいるが、自律訓練法の温感公式(第5公式「お腹が温かい」)ができるようになると、イメージ法で苦労することは少ないとされている。



自己催眠の最新形態

催眠導入スクリプトを読む(音読する)ことで、必要な軽トランス状態を得て、
その後は、用意してある暗示スクリプトをこれまた読むだけで良いという、
必要な3つの段階を全て読む(音読する)ことでおこなう
考えられる限りでもっとも楽で成功率が高いと思われるInstant Self Hypnosisの翻訳が出た。

オリジナルな暗示スクリプトが必要な人にも
催眠導入スクリプトを読む(音読する)ことで、必要な軽トランス状態を得てから、
必要項目を書き込んでいくフォーマットがついている。スクリプトの作り方のヒントにもなる。
著者は景気付けに(?)怪しげな経歴を披露しているが、提供されているスクリプトはモダン・ヒプノシス
のもので参考になる。










補遺(ちょっとしたコツ)


1.よい雰囲気(セッティング)をつくる


どの本にも絶対に書いてあるはずなのに、
最初に書いてあるせいか、けっこう読み飛ばされる事項。
「しずかで、暑くなく寒くない、邪魔がはいらない場所で自己催眠すること」

普段は他のことで気がまぎれているので気付かない物音を、
自己催眠しようとすると結構気になる。静かな音楽をかけるのも手。

電話は線を抜く、携帯は電源を切る

視覚的にうるさい部屋は、照明を消して、できればろうそくやランプ系の明かりだけにする。

楽な姿勢をとる。締め付けるもの、ベルトやブラジャーは外しておく。

と、環境を整えるのが、成功への第一歩。

2.(催眠)トランスに入ることにこだわらないこと

 軽い催眠トランスになら、大抵の人は入れる。
 でも、普通の人は、催眠トランスに入ったことに大抵は気付かない。

 自分をよくするのは「暗示」の方であって、催眠トランスは、
暗示を入りやすくするだけである。

 なので、催眠トランスに入ったかどうかに、こだわらず、
 暗示すればいい。

 暗示の内容は(あたりまえだが)、自己催眠に入る前に、決めておくこと。1回の催眠には、1つの内容にしておくこと。

3.暗示は「〜したい」ではなく「〜である」にすること

「自信が持てるようになりたい」は願望であって、暗示向きではない。
なぜなら、「〜したい」というには「今は〜でない」というのと同じだから。
「〜やってみる」「ときどきは〜」「たぶん〜」「〜しない」「〜できないようになる」も同様である。

せっかくの暗示なのに「私は自信がない」「自信がない」と繰り返してしまえば、
もちろん逆効果である。

暗示をつくるコツは、「もし自分の願望が実現したら,自分は,周りは、どうなっているか?」を
考えて,箇条書きにしておく。できるだけたくさん、くわしく書く。

これを組み合わせて,暗示をつくるといい。
ディテールが詳しいほど、イメージしやすいほど、
イメージの他にも五感全部をつかうものであるほど、
(触覚や嗅覚まで盛り込めればベスト)
よい暗示になる。




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