「モノ」という言葉

「モノ」という言葉

 「モノ」という言葉(和語)に、出会った/結び付いた漢語は「物」「者」「鬼」等いくつかありました。「物」は存在一般を指す言葉でしたが、「モノ」にはさらに「あっち側の存在」、すなわち彼岸の/霊異なもの(物も者もおよばぬ世界)をも含めて、「存在(+反存在)全般」を指す言葉だったので、「鬼」とも出会うことになります。すなわち「もののけ」は「物の怪」であるよりも、「鬼(モノ)の怪」であり、また「ものしり」は「物知り」であって「鬼(モノ)知り」であり、「物狂い」はもちろん「鬼(モノ)狂い」であり、「物語」は同時に「鬼(モノ)語」であるといったように。
 一方「コト」という言葉もその含み持っていた意味の広がりから、いくつかの漢語に出会い、そのそれぞれの結び付きにおいて、特化され分化していきました。「事」であり同時に「殊」であり(さらに「異」であり「言」である)「コト」は、一般に対しての特「殊」、個別的「事」象を指す言葉です。「物知り」が一般的・普遍的な知識に関わるものであるならば、「事知り」に対応する「事情通」は、個別的事象、個々の事例についてよく知っているものをいいます。
 「モノ/コト」の対照でいうなら、「そんなことがあるものか」とは、「モノ」(一般)でもって、「コト」(個別・特殊的事例)を押し潰し、否定するモノ言いです。
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