骨相学は、19 世紀前半の欧米で大いに流行する。大衆的な人気
を博した理由は、いくとおりもの意味でわかりやすいことだっ
た。精神(という見えないもの)と物(頭蓋骨という見えるも
の)の対応も分かりやすければ、頭蓋骨(アタマの形)という外
から見えるもので判断できるのもわかりやすい。おまけに非専門
家にも修得が簡単である。 頭蓋骨の収集と脳の計量が流行し、骨
相図がちまたに氾濫し、欧米のあちこちで骨相学会が誕生し、 多
くの学者が研究のために死後自分の脳を提供した。またT.ブラウ
ン、E.スウェーデンボリ、F.J.ハイドンら有名人の頭蓋骨が狂信的
な骨相学者によって墓から持ち去られた。
その後の展開をごく簡単にまとめると、こんな感じ。
1 通俗的悪用がはびこり、シュプルツハイムともどもガルも
山師的に人気をなくしていく
2 大脳中枢の地図が明確に決定されてゆく中でガルの「器官
説」自体が否定されていく
3 犯罪への応用=犯罪の計測学から実証的犯罪研究へとつな
がっていく。
4 犯罪の素質論から、優生学や人間改良への展開。これは断
種論(特定の人種を断つことを目指す)にもつながっていく。
ちなみに人種の骨相学的分類では、日本人を含む「モンゴリア
ン」は「倫理的に劣り模倣的で独自性がない」らしい。
なお、科学として前向きに捉えようとするページとして、
The Phrenology Pageがある。骨相学の歴史や論争の変遷、
人類学との関連などのリサーチを紹介してる(英語のみ)。