アリスティッポスの「居候の哲学」に対して、ディオゲネスは「樽の生活」で対抗したことはよく知られています。
アリスティッポスは自分の享楽にも禁欲にもなんの価値もおきませんでしたが、ディオゲネスは自分のみずぼらしさになんの価値もおきませんでした。
あるときディオゲネスがキャベツを洗っているところに、アリスティッポスが通りかかりました。
「やあ、ディオゲネス君」
アリスティッポスが言いました。
「君が人間との付き合い方を心得ていたら、キャベツなんて洗わなくてもすんだろうにね」
「そうだね、アリスティッポス君」
ディオゲネスは答えました。
「君がキャベツの洗い方を心得ていたら、王さまのあとなんか追いかけずともすんだろうにね」
アリスティッポスはいつも王さまの周りをうろついていたために「王の犬」と呼ばれましたが、ディオゲネスは町中をうろついていたため「ただの犬」と呼ばれました。